【2019年】窪美澄おすすめの本ランキングTOP7

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【2019年】窪美澄おすすめの本ランキングTOP7

窪さんはグレイトーンで寂しさ漂う雰囲気をまとった男女を描くのがとても巧いと思います。ちょっと湿り気のある男女の静かなやりとりに心がざわざわしてきて、切なくて胸がしめつけられます。心の底に漂う哀しさや寂しさを丁寧に描いてくれる作家さんだと思います。窪美澄さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。

 

 

第7位.窪美澄「すみなれたからだで」

窪美澄「すみなれたからだで」がおすすめの理由

テーマがバラバラのようで、すべてが纏まっている短編集です。高校生時代、母の再婚相手と関係を持ってしまった文。母の目を盗みこっそり、けれど徐々に大胆になっていく二人。母にばれて、その彼とは会えなくなって。けれど一度も忘れたことはなくて。無様でもいいから日々を生きていく文。本当に切ない。切ないけれど、一筋の光が差し込んでくる物語でした。いろいろな時代、いろいろな年代の「生」と「性」、そして「死」。出会いと別れ。穏やかだったり、激しかったり。みんな誰だって手探りで生きているんだと思いました。ひとつひとつの言葉が重たく、心の奥底にある本音が疼くところが何とも言えません。特別な事件ではなく、どこかにありそう、どこかにあったのかもしれないような日常がつまった一冊でした。いつもながら濃密な世界を薄暗く冷めた視点で抉り出すのが上手いです。表紙のデザインが、中身と見事にマッチしています。

 

 

第6位.窪美澄「水やりはいつも深夜だけど」

窪美澄「水やりはいつも深夜だけど」がおすすめの理由

どの話も家族のチクチク胸が痛む話なのですが、最後は救いがあるので読後感はよかったです。子どものころ、早く大人になりたかったことを思い出しました。してみたいことを制限される窮屈な子どもの世界とは違い、大人の世界はきっと今よりもっと広々と自由なものなのだろうと勝手に思い込んでいました。けれど、実際の大人の世界はそんなに甘いものではなくて。女友達やママ友とも距離感、子育て中の妻の扱い等で思うようにいかずに悩んだり。育てている鉢植えに一人でそっと水やりするように、深夜に一人、へこんで乾いた心にひっそりと水やりをして、自分の気持ちを整理し、折り合いをつけようとする大人たち。けれど、水やりし続けることで少しづつ乾いた気持ちにも水分と栄養が満たされていく。水やりは続けることに意味がある、そして自分の境遇に憂うのではなく、受け入れて前を向くことの大切さを気づかさせてくれる短編集です。

 

 

第5位.窪美澄「じっと手を見る」

窪美澄「じっと手を見る」がおすすめの理由

誰かが、中島みゆきのような小説と言っていましたが言いえて妙、確かにそういう雰囲気を含有する小説だと思います。心にぽっかり空いた穴、孤独によるやるせない寂しさ。穴埋めするかのように身近な他人にしがみつく。そして、他人と寄り添う温かさを一度知ってしまったら、なかなか離れることができない。孤独に耐え切れずもがく男女を描いた連作短編は全体的にグレートーンです。主人公が従事する介護士の仕事の辛さが物語を一層暗くしているように感じます。老いて死に向かう人々の世話をすることで、自分の生を確保していくジレンマは、想像するだけで胸が苦しい。個人的にも身近な人間が週に数回デイサービスを受けていますが、本作品を読んで介護士の方々のは本当に頭が下がる思いです。幾つかの経験を経てできた手の皺は苦労を重ねてきた証。そんな手と手を重ね愛しさを思い出した彼女たちのこれからに少しでも光が射すといいなと、二人の未来を静かに温かく見守りたくなりました。

 

 

第4位.窪美澄「よるのふくらみ」

窪美澄「よるのふくらみ」がおすすめの理由

同じ商店街で生まれ育った幼馴染の3人。性格が正反対の兄弟と、弟の同級生であり兄の恋人の彼女。3人が交代で主役になって物語が進んでいき、三人三様の複雑な心境が徐々に明らかになっていきます。優等生の兄は兄なりの、自由奔放な弟は弟なりの、その両者の間で揺れ動く彼女には彼女なりの。それぞれの想いをスパッと赤裸々に描いています。子どものころは深く考えずにただ笑っていればよかったのに、大人になると人間関係も複雑に絡み合い柵に揉まれたりとため息をつくことが多くなる。誰も傷つけずに生きていくことなんて不可能なのかもしれないと改めて思いました。傷つけあって相手を憎んだり、そんな相手を卑下したり。厄介なことが色々あっても、そうやって人と人が一緒に生きていくことはやっぱりいいものだ、と窪さんから教わった気がします。ラストで自分の気持ちを言葉にして伝えられた兄に幸せが訪れるといいなと思いました。

 

 

第3位.窪美澄「やめるときも、すこやかなるときも」

窪美澄「やめるときも、すこやかなるときも」がおすすめの理由

これまでの生と性がテーマになることが多かった窪さんの作品とは違った色合いですが、この路線はかなり好きです。過去を引きずっている家具職人と、32歳でまだ処女の恋愛下手な主人公の二人が近づいていく描写は初々しくて、もどかしさもあり、忘れてしまっていた感情を思い出させてくれました。三十二年も生きていれば、人は皆それぞれの事情を抱えているし、簡単に剥がせないかさぶたの一つや二つ持っていたり、劣等感を抱えて自分を卑下したり、と色々あるはず。自分の弱さや脆さを正直に他者に開くことは本当はとても難しい。そこには信頼が必要だから。まるで本来一対の貝のように、信頼できるパートナーを見つけられて本当によかったです。この人と一緒にいたら、抱えている暗い出来事に対して正面から向き合える。そんな特別な相手がそばにいることこそが大事なことだと思いました。いつもの閉塞感もあまり感じず、人を好きになること、生きることの意味を伝える言葉に胸に沁みました。

 

 

第2位.窪美澄「雨の名前」

窪美澄「雨の名前」がおすすめの理由

迷う悩み、ぎりぎりのところで生きている五人の主人公による、五つの物語。どれも胸が締め付けられるような生々しさに満ちています。なんとなく不穏さを感じながら読み進めていたら、突き落とされるようなラストでした。様々な形で雨が登場します。うまくいかない現実や、理不尽な出来事、もがいたり、時に逃げ出したり、罪の意識に苛まれたりという人々の日々の物語が綴られています。つまらない日常を捨てて逃げ出したい、決まりつつある未来に恐れを感じる、過去の過ちから逃れられず、この先罰が当たるような気がしてしまう。誰もが不意に抱えてしまうかもしれない感情たちは、とても現実的で、身近に感じました。ラストのあたたかい雨の降水過程では希望を感じる物語だったので、理不尽だらけの短編集でも読後感は悪くなかったです。そういう意味で、物語を並べる順番ってけっこう大事なのだと分かり関心しました。

 

 

第1位.窪美澄「ふがいない僕は空を見た」

窪美澄「ふがいない僕は空を見た」がおすすめの理由

タイトル通り、「ふがいない僕」たちによる連作短編集です。まず第1章の熱量がすごい。隙のない描写に胸が詰まります。短編としての完成度とその余韻の浸りました。そこから派生したであろう物語も広がりを感じさせます。窪さんは人が抱えている寂しさや孤独を描くことが上手い人だなとしみじみ思いました。みんなほの暗く、途方もないやっかいなものを抱えてもがき、それでもちょっとずつ前へ進む前向きさも感じられます。そんなふがいない僕たちのことをやり切れない思いで読み進めながらも、嫌いになれず、むしろ愛おしくさえ思える自分がいました。不器用に、そしてそれでも生きていく彼らの姿に、読んだ後少し他人にやさしくなれる気がします。この作品は私の心にいつまでも優しい余韻を残してくれました。読み終えて、空を見上げて、僅かばかりの青空も曇り空の隙間から見えるはず…まさにそんな気分です。

 

 

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