【2019年】清水義範おすすめの本ランキングTOP7

スポンサーリンク
スポンサーリンク

【2019年】清水義範おすすめの本ランキングTOP7

他の作家の作風を模倣して新しい作品を作る、「パスティーシュ」という手法を使った作品が有名な作家です。ただ、それほど幅広く小説を読んでいるわけではない僕としては、清水さんの作品をパスティーシュ作品として楽しんだことはほとんどありません。それとは別に、清水さんの作品に付きまとう不思議な世界観が好きで、本を買い集めていました。「奇妙な」「珍妙な」という言葉が似合う作家です。清水義範さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。

 

 

第7位.清水義範「スシとニンジャ」

清水義範「スシとニンジャ」がおすすめの理由

僕自身は短編集ばかり買っていましたが、清水さんは長編も多く書かれています。「スシとニンジャ」はたまたま買った長編作品の一つで、おそらく今も実在するであろう「日本が今でもサムライの国と思っているアメリカ人」の日本訪問記という形をとっています。まず主人公のジムがかっこいい。日本に対して壮大な勘違いを持って訪日し、その夢はどんどん崩されていくわけですが、自分の信じる「日本」というものを自分で体現していきます。旅先でリエという女の子と知り合い、ジムはリエに魅かれながらもその想い人との逃避行計画に加担するわけですが、それにより娘を失うことになった父親のサクラギ氏がまたかっこいいです。それまで親交を深めていたジムを責めることなく、それどころか帰国するジムの見送りに出向き、土産まで持たせます。小説であり実際にこういう人たちがいたわけではないのですが、「あなたのおかげで一人のアメリカ人の日本旅行が素晴らしいものになった。ありがとう」という気持ちになりました。

 

 

第6位.清水義範「永遠のジャック&ベティ」

清水義範「永遠のジャック&ベティ」がおすすめの理由

「永遠のジャック&ベティ」という作品が表題作の、短編集です。中学英語の教科書に出ていたジャックとベティが34年ぶりに再会したら、そして中学英語のあの変な言葉遣いでやりとりしたら、という設定の表題作も面白い作品ですが、収録作の「インパクトの瞬間」という作品が好きです。CMで流れる宣伝文句を取り上げたもので、普通に聞いていれば意味も分からずそういうものがあるんだなぁ、となんとなく納得してしまうところを、敢えて真剣に論考する作品です。そのくせ、真剣に考えた結果これはこういうものだった、という結論は一つも出ません。「考えに考えたが結局その正体は分からず、我々としては自信満々に発せられるその言葉をすごいと思うしかない」という、情けないけどでもその通りだ、という真理が導かれます。「聞き流せばいいものを真剣に取り上げる」という面白さは清水さんの他の作品にも見受けられます。

 

 

第5位.清水義範「国語入試問題必勝法」

清水義範「国語入試問題必勝法」がおすすめの理由

表題作の「国語入試問題必勝法」は、第9回吉川英治文学新人賞受賞作だそうです。理系分野は得意だが国語でどうしても点が取れない受験生が、国語に関して独特の指導方針を持つ家庭教師の教えを受け、どんどん国語の点を取れるようになっていく、という話です。遠い昔に受験生を経験した身としては、とても面白く読めました。当時に読んでいたら、一か八かの時には絶対この方法を使っただろうな、なんて。ただこの作品に書かれた方法には根拠は一切なく、清水さんご自身も世の受験生に「これを信じて受験に臨んではいけない」とおっしゃっています。収録作品にも面白いものが多くあり、「時代食堂の特別料理」という作品が気に入っています。商店街の裏道の食堂で、主人公をはじめとする客の面々が不思議な体験をする。この食堂が「特別料理」を提供する目的とは、という話で、店の雰囲気、従業員の人柄、突然現れるその正体のヒントなど、読んでいてその世界に引き込まれました。

 

 

第4位.清水義範「蕎麦ときしめん」

清水義範「蕎麦ときしめん」がおすすめの理由

表題作の「蕎麦ときしめん」は、清水さんが「東京の人が書いたとんでもない名古屋論」を読んだ感想、という設定で書かれた作品です。清水さん自身が名古屋出身者であり、名古屋を前面に出した作品が多く書かれていますが、一方で身内だからこそやたらと名古屋を褒めるのははしたない、という雰囲気の作品も多くあります。やtこの作品でも「東京人から見た」という設定が使われていますが、深読みすればやっぱり清水さんの名古屋論なんですよね。それを「私が書いたわけではない」と強く主張して書いているため、これを読んで怒りを覚えた名古屋人は誰に文句を言えばいいんだ、という、なんとも奇妙な印象の作品に仕上がっています。表題作以外では猿蟹合戦をテーマにした「猿蟹の賦」という作品がお気に入りです。猿蟹合戦の登場人物の心情をもう少し小難しく書いたもので、些細な物事をあえて無駄に難しく論考する面白さがあります。なお、この作品は後に、清水さんの他の作品で評論家に批判される形で再登場します。

 

 

第3位.清水義範「おもしろくても理科」

清水義範「おもしろくても理科」がおすすめの理由

幅広いジャンルで知識をお持ちの清水さんが、理科の解説本として著したものです。とは言っても科学の専門家が書くような難しいものではありません。「素人が自分なりに調べて分かったことを披露する」というもので、ご本人曰く「分かる人には分かりきったことが書かれただけのふざけた解説、分からない人にはちんぷんかんぷんだろう」とのことですが、理系出身の身としては、分かるからこそ分からない「分からない人がなぜ分からないか」への配慮が随所に込められた名著だと思います。「理科が嫌い」という人に、理科の世界への入り口として読んでもらいたい一冊です。この本はシリーズ化されていて、続編に「もっとおもしろくても理科」、さらに派生して算数シリーズ、社会科シリーズがあります。また、この本では第1話で勝手に主人公にされた漫画家の西原理恵子さんが、その縁から全編通して挿絵を担当していて、文章と漫画で二度楽しめる作品になっています。

 

 

第2位.清水義範「黄昏のカーニバル」

清水義範「黄昏のカーニバル」がおすすめの理由

SFから小説を始めた清水さんが、SFから離れてしまっている自分を顧みて、「いつか長編SFを」という想いから書き上げたSF短編集だそうです。ご本人もあとがきでおっしゃっていますが、ノスタルジックというか、メカとかロボとかの派手さはありません。それよりも日常生活の中で突然起こったSF、という雰囲気が強く、それがかえってこの作品集をとっつきやすいものにしています。お気に入りは「21人いる!」です。清水さんの作品を元ネタがあると思って読んだことがあまりない僕でも、さすがにこれは分かりました。「11人いる!」ですね。元ネタが、宇宙船で試験を受けるメンバーが10人一組のはずなのに11人いる、というところから始まるのに対し、「21人いる!」では特殊な人生を送ってきたわけでもない一大学生のもとに突如未来から20人の自分が訪れる、というところから話が始まります。突然起こった理不尽な現象を主人公がだんだん受け入れていく過程が微笑ましく、またなぜこのようなことが起こったかが最後に明らかになってすっきり読み終えられます。

 

 

第1位.清水義範「アキレスと亀」

清水義範「アキレスと亀」がおすすめの理由

僕が清水義範さんという作家を知ったきっかけになった一冊です。ふと「アキレスと亀」の話を思い出し、なぜアキレスが亀を追い抜けないのか、自分の中でその説明ができないことに気付き、その答えを探して書店で見つけたのがこの本でした。そのものずばりじゃないか、と思って喜んで買いましたが、この本は「アキレスと亀」という作品を表題作とする短編集であり、元々の目的を果たすことにはまったく役に立ちませんでした。言ってしまえばタイトルに騙されたということですが、その中に書かれた作品群が面白く、買ったその日に一晩で読んでしまいました。外務大臣の会談、一企業の新年会、作家と評論家の対談といったテーマが「文章でのスケッチ」によって表現されていて、それぞれの場面を、「登場人物になり切って」というようなスタンスではなく傍から見ているような気分で楽しめたのです。表題作の「アキレスと亀」も、飲食店で一杯やっていたら隣の若い男女の会話が聞こえてきて、という話で、女の子の気を引こうと知識をひけらかす男を傍からスケッチするとこんなんです、というものでした。多かれ少なかれ男ってみんなこうだよな、という落ちには苦笑しましたものです。なお、この本に収録された「復讐病棟」という作品は「世にも奇妙な物語」の一話としてドラマ化されています。

 

 

タイトルとURLをコピーしました