【2019年】レイモンド・チャンドラーおすすめの本ランキングTOP7
最も好きな小説家の一人。特に文体を気に入っています。ハードボイルドの作家です。単なるハードボイルド小説にとどまらず、作品は現在では文学だと認知されています。文体もキャラクターもストーリーも、叙情的だと言われています。熱心なファンはチャンドリアンと呼ばれます。私はチャンドラーの小説から漂ってくる独特の臭気が大好きです。もちろんフィリップ・マーロウは大好きです。小説全体からかっこよさがにじみ出ています。レイモンド・チャンドラーさんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.レイモンド・チャンドラー「プレイバック」
レイモンド・チャンドラー「プレイバック」がおすすめの理由
1958年に刊行されました。チャンドラーの絶筆です。チャンドラーが最後に完成させたのがこの作品です。チャンドラーの作品は大抵映画化されています。しかしこの作品は映画化されていません。理由は多分この小説の完成度があまり高くないからだと思います。この作品には有名な台詞が出てきます。強くなければ生きてはいけない、優しくなければ生きていく資格はない。この作品より以前にチャンドラーは妻を亡くします。二十歳ほど年上の女性でした。その悲しみと喪失感から、チャンドラーは飲酒に走ります。結果健康を害して死んでしまいますが、その過程でかかれたために完成度が下がってしまったと言うことです。万人向けの小説ではありません。熱心なファンにとっては、初めてチャンドラーが自分の内面まで見せてくれたと感じることの出来る作品です。出来ればチャンドラーのために一杯のジンを捧げて、それから読み始めるのがおすすめです。フィリップ・マーロウが出てきます。
第6位.レイモンド・チャンドラー「高い窓」
レイモンド・チャンドラー「高い窓」がおすすめの理由
一九四二年に刊行されました。この本は長いお別れ何かからすると、結構薄い本です。あらすじはフィリップ・マーロウが金持ちの老女からの依頼を受けるところから始まります。探すものは金貨の所在です。老女は金貨が盗まれたと断定しています。捜査をを始めたマーロウの前にうそや脅迫がまっています。そして殺人も。出てくる人間はクソ野郎ばかりです。先ほど述べたように、この本はあまり厚い本ではありません。大きな話は展開しません。マーロウもあまり派手派手しく活躍するわけではありません。それでもこの本は佳作です。七位にあげたプレイバック以外のチャンドラーの長編は、どれも質が高いです。最初読んだときに、何でマーロウに金貨探しをさせるんだろうか、と言う疑問がわきました。地味だしハードボイルドとあってない感じがしたのです。それと高い窓という題名は何の変哲もなさ過ぎて、あまり胸を打ちません。その点等を考えて六位にしました。
第5位.レイモンド・チャンドラー「湖中の女」
レイモンド・チャンドラー「湖中の女」がおすすめの理由
一九四三年に刊行されました。タイトルも湖中の女という、目の奥にイメージがわくようなタイトルになっています。前作の「高い窓」と比べると、マーロウはもっと活躍します。ストーリーはマーロウが会社社長から依頼を受けるところから始まります。行方不明になった妻を探して欲しいと言うことでした。早速マーロウは調査を始めますが、湖中に女性の死体を発見してしまいます。派手なアクションシーンや銃撃シーンもある小説です。動的でわかりやすい形でマーロウが活躍します。チャンドラーの作品は大体プロットが難しいのですが、この作品でも錯綜しています。楽しめないのかというとそういうこともなく、きちんと楽しませてくれます。本もそれほど厚くありません。湖中の女がこの順位になってしまったのは短い割にはプロットが多少難しいという一点でした。
第4位.レイモンド・チャンドラー「かわいい女」
レイモンド・チャンドラー「かわいい女」がおすすめの理由
一九四九年に刊行されました。ハリウッドが舞台です。チャンドラーは脚本家として映画産業で働いていたこともありました。ハリウッドの光と闇を間近でみたはずです。私はチャンドラーの小説を全て清水俊二訳で読みましたが、この小説に関しては決定的なミスがありました。原題ははリトル・シスター、かわいい妹です。かわいい女はかなりきわどい意訳になります。(村上春樹訳ではタイトルはリトル・シスターになりました)ある少女が行方不明の兄の捜索をマーロウに依頼するところから、物語は始まります。殺人事件を経て、マーロウがハリウッドの闇に分け入ります。この小説の舞台は、マーロウのシリーズではちょっと特異です。会話は相変わらずの良い切れ味です。ベストスリーに入れなかったのは分量もありますが、他の三冊に比べるとどうしても重量感におとる感じがしたからです。とはいえ良い小説です。単純に相手(残りの三冊)が悪かったのです。
第3位.レイモンド・チャンドラー「大いなる眠り」
レイモンド・チャンドラー「大いなる眠り」がおすすめの理由
一九三九年に刊行されました。この作品は特別です。他の作品とは同列で扱えません。なぜならフィリップ・マーロウが最初に登場する作品だからです。そしてフィリップ・マーロウものの方向性を決定づけた作品です。しかもシリーズの仲でも完成度は高く、名匠ハワード・ホークスにより映画化されています。主演を演じたのはハンフリー・ボガートです。ハンフリーボガートは本当にハードボイルドが似合う俳優で、ハメットのマルタの鷹や、カサブランカにも出演した名優です。物語はマーロウがお金持ちの将軍から呼び出される所から始まります。将軍の娘がギャンブルで借金を作ってしまい、脅迫されており、事件の解決を依頼されます。犯人と思われる事件を追っていくと、血と硝煙が待っていた。汚れた町に誇り高き探偵が分け入っていく。例によってプロットは複雑ですが、チャンドラーで一番最初に読むべきはこの本だと思います。
第2位.レイモンド・チャンドラー「さらば愛しき女よ」
レイモンド・チャンドラー「さらば愛しき女よ」がおすすめの理由
一九四〇年に刊行されました。シリーズ第二作です。題名がとても有名です。ロマンチックで非常に引きつけられる素敵なタイトルだと思います。昔はこの作品がシリーズの中盤、または終盤に書かれたのだと思っていました。二作目だと知ったときは少し驚きました。ストーリーは大鹿マロイと呼ばれた男が、刑務所から出た後に別れた恋人を探しますが、果たせませんでした。なにも応えない酒場の主にカッとなり、再び殺人を犯して逃走します。マーロウはマロイのために、彼の元恋人を探します。大鹿マロイの一途な愛の行方はどうなるのか、といった話です。バカな男の一途な愛と、そのバカな男のために奔走するマーロウに、男だからこそのシンパシーを感じます。大鹿マロイはこのシリーズでも珍しいぐらいにキャラクターが立っています。私はマロイのような男はわりと好きです。マロイのために祈りながら読みたい一冊です。
第1位.レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」
レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」がおすすめの理由
一九五三年に刊行されました。チャンドラーの小説のなかで間違いなく一番優れている作品。アメリカ文学の古典の名にふさわしい作品です。マーロウの感傷的な部分が、登場人物テリー・レノックスの暗部と呼応している感じがたまらないです。何回も読むべき作品ではあるのですが、例によって難しいプロットと分厚いページ数が立ちはだかります。相当の時間と精神力を費やすことになると思います。それでも人生で二回程度は読むべき本だと私は思います。それぐらいおすすめです。この本に出てくる酒の記述は含蓄にとんで、かっこいいです。物語はマーロウがテリー・レノックスと出会うところから始まります。マーロウはある日どこか品のある酔っ払い、テリー・レノックスと出会います。彼に殺人の嫌疑がかけられます。マーロウは彼の逃亡を助けた形になります。苦い真実を探り当てるように真相に迫るマーロウの前に運命の男が現れます。最終的に現れた真実に対して、マーロウがどんな判断をするかが読みどころです。ストーリーを通して常に倫理的に振る舞うマーロウは常にかっこ良く、品格を感じさせます。