リチャード・リンクレイター監督おすすめの映画ランキングTOP5
実際に時間を経過させながら映画を撮るという今まで誰も成し遂げたことのない手法、もはや偉業とも言える作品群。アメリカのユースカルチャーから恋愛、哲学まで、ときにドラッグ効果を交えながら秀逸に描き出す名手だと思います。
第5位.リチャード・リンクレイター「ビフォアサンセット」
リチャード・リンクレイター「ビフォアサンセット」がおすすめの理由
あれから9年後、ほんとに9年後。監督とキャストも実際に歳を経て、ジェシーとセリーヌの会話も仕事や離婚についてなど、実生活を反映したリアルな心境が興味深いです。セリーヌがサイン会にくるかもしれないと、著書を出版したジェシー。別れてから再会するまでの間に、結婚し、子どもができて、離婚も経験したけれど、心の中に秘めたロマンティックな幻想は永遠。大人になっても変わらず凛とした姿勢で物事を語るセリーヌが素敵です。一度しか会ったかとがないとは思えない二人の途切れのない流れるような雰囲気に、友達同士でもすごく好きな相手だとどんなに月日が経っていようが再会すると久しぶりの気がしなかったり、同じように話せたりする感覚あるなぁと、この二人はお互いずっとどこかで思い合ってたんだなと感じました。夕日が落ちだすころセリーヌの部屋で、もう出発しないと飛行機に間に合わないよ〜♪と彼女が歌いながら終わるラストはまた素敵な余韻を残してくれました。1作目もこの後どうなったのかと想像を巡らせましたが、個人的には2作目のラストでこのあと二人がどうなるのか気になってしょうがなかったです。3作目作ってくれてありがとう監督!
第4位.リチャード・リンクレイター「ビフォアミッドナイト」
リチャード・リンクレイター「ビフォアミッドナイト」がおすすめの理由
前2作のファンタスティックな夢物語と違って、これは現実に結婚したり一緒に過ごすということの難しさを描いていて、オープニングの元妻との息子と別れるシーンから始まっているのが、家族の難しさを表しているなと感じました。そこから空港を出るとセリーヌが待っていて、そこで二人の結末に対してのカタルシスがわーっと溢れて1作目からの18年という年月を思い、よかった!という気持ちになりました。この気持ちは実際にこれだけの時間を使って撮っているからこそ感じるもので、他の映画では感じることのできないものすごいものだなと、ここで改めて監督とキャストの成し得た偉業に感服しました。主役の二人が本当に夫婦にしかみえないです。料理をしたり家族親戚と過ごしたり、完全に地に足のついた現実の中での会話の数々。10年近く一緒に過ごしているカップルのリアルさがすごいです。ベッドシーンでヌードになってるのに興奮よりも日頃の相手への不満の方が強い。ジェシーの「俺以外に君と半年以上付き合えるやつはいない。」ってセリフ、男の人本当によく言いますよね。出会いの素晴らしさや恋を描いた前2作に、実際のキレイごとではない愛を描いてドスンと落とし前をつけた3作目、本当に素晴らしいです。
第3位.リチャード・リンクレイター「スクールオブロック」
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リチャード・リンクレイター「スクールオブロック」がおすすめの理由
ロックの歴史を教えるため黒板いっぱいに書かれた歴史的バンドとその系譜たち。この授業めちゃくちゃ受けたい。監督とジャックブラックのロックへの愛情が溢れています。「ドラゴンタトゥーの女」でも原曲使えなかったほど映画で曲を使わせないレッドツェッペリンが使用を承諾したところにもその熱意が伺えます。そしてネット役と脚本を書いているマイクホワイトとジャックブラックの友情があついです。ACDCパロの短パンスーツはブラックが着るとピチピチでかわいい。バッドチューニングの登場人物が成長したみたいなデューイのキャラクター。こども映画だからハッパは出てこないけど、これだけだらだらでロックロック言ってるならやってるはず。ストーリーは「今を生きる」のおしり叩かれないバージョン。子供達にロックを通して反抗や自由を教える先生。こういう勉強以外のなにかを教えてくれた先生って一生忘れない。エンディングで学校を去った後も子供たちとセッションして繋がっているのがとてもよかったです。今やブロードウェイのミュージカルにまでなるほどで、誰が観ても面白いし劇中の楽曲もかわいくてキャッチーで最高です。
第2位.リチャード・リンクレイター「6才のボクが、大人になるまで」
リチャード・リンクレイター「6才のボクが、大人になるまで」がおすすめの理由
ビフォア3部作の間でこっそり製作し続けていた本作、リンクレイター恐るべしです。子どもは成長に伴う身体の変化がめまぐるしい分この撮影方法がもたらすパワーがものすごいです。2時間で12年分の子どもの成長と、子どもが成長した後の母親の虚しさや寂しさが胸に迫ってきます。家族に対して責任感のない父親をイーサンホークが演じています。イーサンホークは何歳になってもどこか少年ぽい雰囲気があって、すごく合っているなと思いました。母親役のパトリシアアークエットはアカデミー助演女優賞も納得の見事な母親描写。だんだんと中年らしくなっていく体型も母ちゃん感が増してとてもよかったです。メイソンJr.が大学生になって家を出る日、私の人生にはもうなにも残ってない!と叫ぶシーンは泣けます。離婚、再婚そしてまた離婚し、いつも自分を犠牲にして子どもを育てる為に必死で働いて頑張ってきても、子供は当たり前のように自分のもとから去っていく。世の母親の凄さ、たくましさ、愛情の深さ。お母さんにありがとう言いたくなる。子供は勝手に大きくなるわけじゃない。父親の存在意義。それもまた考えてしまいました。毎年子役の夏休みに数日づつ撮影し続け、夏休みの自由研究みたいで楽しかったという撮影風景がほほえましい。
第1位.リチャード・リンクレイター「ビフォアサンライズ 恋人までの距離」
ビフォア・サンライズ 恋人までの距離/DVD/WTB-C2531
リチャード・リンクレイター「ビフォアサンライズ 恋人までの距離」がおすすめの理由
誰でも一度は妄想したことのあるような白昼夢みたいな話ですが、実は監督の実体験が元になっているストーリー。映画化したのも、今どこでなにをしているのか分からないその人に、覚えていますか?と伝えるためだったそうです。続編のジェシーの行動ともリンクして、恋の原動力のすごさ。ベルギーの街中を歩きながら恋愛や家族のこと、哲学的な様々な会話をして段々と惹かれていく二人。女性と男性での物事の捉え方の違いの他にも、アメリカとフランスの人種的考え方の違いも面白いです。今はなき試聴機の狭いブースに2人で入り込んで、絶妙な距離感の中で合わせずに交わされる視線。空が暗くなればなるほど、朝に近づくほど、好きな人の声って魅力的に聞こえてくるし、離れたくなくなってくる。ラストのジェシーの表情を見ながら、気づいたら自分も同じ顔で画面に溶けそうになってました。恋の始まりだけを感じ合った別れだから、ただ好きな気持ちだけがずっと残って心が幸せで満たされる。連絡先を聞かなかった理由は、運命を信じているからのような気がしてたまらない。二人のはかない夢のような一日の余韻が本当に心地よく、いつまでも愛おしくなる映画です。