【2019年】柚月裕子おすすめの本ランキングTOP7

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【2019年】柚月裕子おすすめの本ランキングTOP7

柚月さんは女性作家さんですが、人物描写、特に年配の、男臭い男性を書くのが本当に上手いです。ミステリーはもちろん、ハードボイルド好きの男性読者もうならせるヤクザものも書けるのはさすが。毎回胸が熱くなる人間ドラマが沁みます。柚月裕子さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。

 

 

第7位.柚月裕子「あしたの君へ」

柚月裕子「あしたの君へ」がおすすめの理由

家庭裁判所調査官の話です。公務員といってもこんな仕事があったのかと自分の無知を痛感しました。世の中には重い荷物を背負っている人がいかに多いことかと思いました。窃盗、ストーカー、離婚等の問題の奥に潜む荷物も人それぞれ。修習中の家裁調査官補・大地が、問題を抱えた人たちに救いの手を差し伸べようと奮闘する物語です。まだ経験を浅く、自分は家裁調査官に向いてないのでは、と一人悩む大地。それでも一つ一つの案件に真摯に取り組み、相談者の気持ちに寄り添い、自分の足で丁寧に調査する大地の姿にとても好感が持てました。登場人物の、置かれている状況や心の機微がよく書かれているように思います。何かに傷つき、悩み、その場に立ち止まったまま動けずにいる人が、半歩でもいいから歩き出せる力になりたいというかんぽちゃんみたいな人が是非増えて欲しいです。

 

 

第6位.柚月裕子「盤上の向日葵」

柚月裕子「盤上の向日葵」がおすすめの理由

駒の持ち主を探しながらじわじわと真相に迫ってくる刑事たちと、親に虐待され将棋だけを生きる支えとしてきた孤独な棋士との物語が交互に書かれていきます。唐沢さんの優しさが好きでした。あの時、あの時もっとと悔やまれてなりません。誰が犯人という話ではなく、桂介の中に流れている血、桂介の背負ってきた孤独を感じて欲しいです。将棋ミステリーだけあり、棋譜が丁寧に書いてあります。将棋のわかる人はさらに楽しめると思います。私は駒の進め方がわからないので最初は読みづらかったけど、だんだん血がたぎるような彼らの熱い戦いが伝わってきて、勝負の行方に手に汗握りました。緊張感、ヒリヒリ感がすごいです。将棋の駒を指すときの美しい手、パチンと響く音が好き。将棋の駒が死体埋まっていた理由がわかったとき…柚月裕子さんらしい重厚な人間ドラマでした。

 

 

第5位.柚月裕子「最後の証人」

柚月裕子「最後の証人」がおすすめの理由

事件の真相を知ったとき、鳥肌が立ちました。絵に描いたような幸せな生活から一転、一夜にして奈落の底に突き落とされた夫婦。最愛の息子を失った上、事実を捻じ曲げられるという理不尽な目にあった悔しさは想像を絶します。7年前の事件、夫婦の葛藤、法廷という異なるシチュエーションを織り交ぜて物語を進めるなどの技巧が素晴らしい。先が気になってどんどんページをめくってしまうタイプの小説です。夫婦の絆に胸が締め付けられるし、弁護士の執念にも頭が下がる思いがしました。「罪を犯した者は必ず償わなければならない」当たり前に思っていた言葉の重さに言葉が出ませんでした。誰でも過ちは犯す。しかし、一度なら過ちだが、二度は違う。二度目に犯した過ちは、その人間の生き方だ。ミステリーから人生の教訓を得ました。まさに、最後の証人が鍵を握る大どんでん返しの物語です。

 

 

第4位.柚月裕子「検事の本懐」

柚月裕子「検事の本懐」がおすすめの理由

自分はまっとうに捜査するだけ、という、いつもクールな佐方弁護士シリーズ第二弾。「法ではなくて人を見る」の考え方のルーツがわかります。検事時代の若き佐方の人となりを知り、ますます好きになりました。5編の短編はどれも男くさいヒューマンドラマ。佐方のカッコいい生き様に魅せられました。今回も心にガツンとくる文章が多かったです。「遠目から見れば一面緑の樹海でも、目を凝らせば一本一本の樹の集まりです。私たちの仕事は樹海ではなく樹を見なければならない」横領弁護士の汚名を着てまで、恩義を守り抜いて死んだ男の心情を描いたラストは思わずホロリときました。違和感を覚えたことは納得するまで追求して、事件の裏の裏まで貪欲に調べ上げる佐方。仕事や人に対する姿勢を正される一冊。正義とは何かという芯の部分を感じさせてくれる作品でした。

 

 

第3位.柚月裕子「検事の死命」

柚月裕子「検事の死命」がおすすめの理由

終始ポリシーを曲げず、ひたむきに事件と向き合う佐方検事シリーズの第三弾。四つの作品からなる本書は第二弾の続編的要素もあって、読んでスッキリできました。女子高生が被害を受けた痴漢事件に対し、我らが佐方検事が検事生命を賭け罪を裁きます。もちろんいかなる圧力にも屈しはしません。検事としての死命を決する戦いは、佐方のクロスカウンターが鮮やかに決まってゾクゾクしっぱなしでした。罪は真っ当に裁かれなければならない。歪みを認めない、そして筋を通すその姿に感銘を受けました。前作で判明した弁護士だった父親の真実も、本作ではより明らかになることで、佐方の秘める心うちに一層惹かれる思いがありました。また、上司の筒井や検察事務官の増田、そして「ふくろう」のオヤジなど、魅力的な脇役も揃い、是非とも今後も描き続けて欲しいシリーズです。

 

 

第2位.柚月裕子「慈雨」

柚月裕子「慈雨」がおすすめの理由

さすが柚月先生だと思います。いい本に巡り合いました。読後、感動の余韻が続きました。警察官を定年退官し、夫婦で巡礼の旅に出るという設定で、現役警官の幼女殺人事件解決の糸口を探しつつ、警察官と人間、上司と部下、親と子、夫と妻、恋人同士、旅で袖すり合うもの、いろんな人間関係の心のうちが丁寧に描かれています。行く先々でふたりは過去の出来事を思い出します。それは決して幸せなことばかりではなかったけど、ふたりの人柄、相手を思いやる心がヒシヒシと伝わってきて、すぐにこの本が好きになってしまいました。人生は晴れの日と雨の日が、同じくらいがちょうどいい。心に沁みる言葉。願わくばその雨は優しい雨、慈雨になりますように。愛すべき人間たちへの讃歌です。目頭が熱くなりました。正義感に溢れ、優しく、正直でストイックな人間たちに拍手!

 

 

第1位.柚月裕子「孤狼の血」

柚月裕子「孤狼の血」がおすすめの理由

正統派ハードボイルドという触れ込みですが、非常に読みやすくて、冒頭から引き込まれる癖のある方言と、次第に加速する組合同士の争いに、続きが気になって一気読み。最初の方はどうしても、見た目や言動がとにかく怖くて悪そうで近寄りがたい雰囲気の大上さんに、一生懸命付いて歩く新人の日岡の二人組は正直読んでいてもハラハラして、本当に大丈夫なのかと思ってしまうものの、次第に見えてくる大上さんの過去に、どうしてか自分も大上さんのあとを追って行きたくなるような、今までに色んなものを背負ってきた背中がただただ格好良く感じてしまいました。まるで綱渡りのような不安定な状態で、いつ背中を押されて足を踏み外し、地の底まで堕ちてしまうかもわからない。そのまま命を落とすかもしれない。警察側かヤクザ側か、どちらからか綱を切られてしまうかもしれない。そんな中を今まで孤りで歩いてきたかと思うと、これぞまさに孤狼だと感じました。

 

 

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