【2019年】岩井志麻子おすすめの本ランキングTOP7
TVでの活躍でおなじみの作家岩井志麻子氏。はっちゃけたおばちゃんというイメージが強いですがその著作はホラーやサスペンスが多く、読むとTVで見る姿とのギャップに驚かされます。作品のジャンルは多岐にわたりますがどの作品もどの作品も人間の業の深さを描いており、じんわりと染み渡るような感覚を味わえる作品が多くお気に入りの作家です。岩井志麻子さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.岩井志麻子「偽偽満州」
岩井志麻子「偽偽満州」がおすすめの理由
岩井志麻子作品の大きな特徴の一つが女性のたくましさ。正統派の強さだけでなく狡さや欲深さなどを兼ね備えた岩井作品の女性たちはまさに「転んでもただでは起きない」女たちばかり。ドロドロとした物語が多いにも関わらずラストまで読めてしまう作品が多いのも、こうした登場人物たちの性質が関係しているのかもしれません。そんな岩井流「転んでもただでは起きない女」の筆頭といっても過言ではないのがこの「偽偽満州」のヒロイン稲子です。舞台は戦前。男に騙されて捨てられた稲子が相手を追って大陸を旅するのが作品のメインストーリーなのですが、稲子というキャラクターがとにかくすごい。だます、裏切る、傷つける、奪うは当たり前。自分を裏切った男を追うためにありとあらゆる手段で大陸をサバイヴしていきます。稲子はご覧の通り善人ではありませんがその逞しさと執念深さには少しあこがれを抱いてしまうほど。ラストのオチは少し弱いように感じられましたが、岩井志麻子氏しか書けないヒロイン稲子の活躍を見て損はない作品です。
第6位.岩井志麻子「自由戀愛」
岩井志麻子「自由戀愛」がおすすめの理由
人間関係の愛憎や葛藤を描きながら、犯罪や人ならざるものの存在が描かれない「自由戀愛」は岩井作品の中でも読みやすい一冊です。舞台は「新しい女性の生き方」が叫ばれるようになりつつも、古い価値観に女性が囚われてもいた大正時代。明子と清子という正反対の女性が悩み苦しみながらも自身の生き方を見つけていく様が描かれます。とはいっても岩井志麻子作品なので、寝取ったり寝取られたりの泥沼恋愛模様が軸となるのはご愛嬌。ですが主人公の女性二人が互いに抱く複雑な感情や、結婚や恋愛にまつわる問題は現代に置き換えても十分理解できるものがおおく、自分が彼女らの立場なら…と思わず考えてしまうところもあります。正妻と妾、略奪愛などセンセーショナルなネタを詰め込みつつも実は共感しやすい内容の本作。昼ドラ感覚で読み始めたら友情や結婚について考えてしまう。そんな深みのある作品です。
第5位.岩井志麻子「楽園(ラック・ヴィエン)」
岩井志麻子「楽園(ラック・ヴィエン)」がおすすめの理由
岩井志麻子作品の耽美で幻想的な作風が最も色濃く出ている作品。ベトナムを舞台に主人公と彼の地で出会った青年との逢瀬を幻想的に描いています。かなり激しいベッドシーンがある本作は、ともすればありきたりな官能小説になってしまいそうなのですが、ベトナムに主人公が降り立ったときから彼女の周りにつきまとう「生者ではない存在」の気配と、詩的な表現でつづられる南国ベトナムの描写が、この作品をただの官能小説ではないものにしています。特に度々彼女の心の中に浮かぶ幻想的なイメージはまるで大人向けの「不思議の国のアリス」のよう。読んでいると主人公とともに異国の地をふわふわとさまよっているかのような錯覚に襲われます。そんな不思議な夢のような本作ですが、ホラー小説の名手岩井志麻子が手掛けただけあって、オチは背筋がスッと冷えるタイプのもの。激しいラブシーンなど万人におすすめできるものではありませんが、幻想的で不思議な作品が読みたい人にはおススメの一作です。
第4位.岩井志麻子「べっぴんぢごく」
岩井志麻子「べっぴんぢごく」がおすすめの理由
美人と醜女が交互に生まれる呪われた家系に生まれた女たちの壮絶な運命を描いた作品。明治時代、放浪の身から村一番の資産家の養女となった一代目のシヲを皮切りに、美しいシヲから生まれたにも関わらず醜く生まれてしまった娘のふみ枝、祖母シヲに似た美貌を持って生まれた小夜子…。と明治から現代までなんと六代にわたる美人と醜女、それぞれの女たちの生きざまがつづられます。内容は岩井志麻子らしく過激な性描写や人ならざるものの存在など、作品の設定もあいまって少し胃もたれする部分も。ですが岩井志麻子節で語られる登場人物たちの人生はどうしても心底嫌悪できず、惹きつけられてしまいます。またいつの時代も人が逃れることができない「美醜」というテーマも親近感がわきやすく、作品に入り込んでしまう理由の一つ。ドロドロしているようでいて、読んだ後は美醜にふりまわされた彼女たち六代の人生を思ってしんみりしてしまう。なかなかに深い作品です。
第3位.岩井志麻子「岡山女」
岩井志麻子「岡山女」がおすすめの理由
戦前の岡山。無理心中未遂によって左目を失ったことがきっかけで、失った左目にこの世ならざる存在を見るようになった女性タミエが霊能力で彼女の元を訪れる人々の悩みを解決していく連作短編集。他の岩井作品と比べて、比較的サクサクと読める軽めの作品となっています。と言っても岩井作品特有の耽美なまなましい描写は健在。気を抜くと薄暗い闇の世界に引き込まれそうになるところも。またさまざまな悩みを持った依頼人がタミエの元を訪れますが、タミエも彼らの悩みを超常的な力ですべて解決できるというわけではなくどこか余韻を残した終わり方をするエピソードもあり、「あの終わり方はつまり…?」と呼んだ後に色々と考えるのが楽しい作品でもあります。軽めのエピソードもで岩井作品らしさを感じられ、結末に頭をひねるのも楽しい一冊。軽めのホラーが読みたい時におすすめの作品です。
第2位.岩井志麻子「黒焦げ美人」
岩井志麻子「黒焦げ美人」がおすすめの理由
タイトルのインパクトが強烈な「黒焦げ美人」。岩井志麻子作品はタイトルが強烈なものが多い気がします。実際に起きた事件をモチーフにしたという本作は、惨殺され焼死体で見つかった女性と生前彼女を取り巻いていた人間模様を、殺された女性の妹の視点で描いています。実はこちらの作品ホラーともミステリーとも言えない作品のためか、ファンからの評判があまりかんばしくないんです。しかし大正という時代の華麗でありながら影の濃い舞台設定や、それを表現したかのような美しい文章は読む価値あり。巧みなトリックの種明かしや、衝撃的な犯人像、おどろおどろしいホラーなどを期待する人にはおススメできませんが、華麗で少し怖い世界に浸りたい人にはおすすめ。岩井志麻子作品で一番おもしろいか?と言われると微妙ですが、ハマれば何度も読み返してしまう、ある意味クセになる作品です。
第1位.岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」
岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」がおすすめの理由
タイトルの「ぼっけえ、きょうてえ」とは岡山弁で「とても、こわい」の意。強いインパクトのタイトルと装丁は目にしてぎょっとされた人もいるのではないでしょうか。表題作の「ぼっけえ、きょうてえ」は明治時代、岡山の遊郭を舞台に醜女の遊女が客に聞かせる昔語りという形をとったホラー。寝物語として語られる遊女の壮絶な過去。そして明かされる彼女にまつわる恐ろしい秘密…。全編岡山弁で語られるそれらにはぐいぐいと引き込まれ一気に読み切ってしまいました。ちなみに「ぼっけえ、きょうてえ」には、表題作の他に「密告函」「あまぞわい」「依って件(くだん)の如し」などあわせて4作品が収録されており、そのどれもが戦前の岡山を舞台に人の業と染み渡るような怖さを描いています。岩井志麻子氏の持つ恐怖への感性が最大限に発揮された一冊。読めば薄暗い人の心の闇が手招きしてくる感覚を味わえると思います。