水木しげるおすすめの漫画ランキング
一見ひょうひょうとしていてのんびり生きているように見える水木大先生ですが、実際のところは超がつくほどの努力の人です。また、戦時中は戦地に赴き極限の状態をご経験されていますが、その経験を後世に伝えるという大きな功績も残されています。水木しげるさんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第5位.水木しげる「貸本版悪魔くん」
水木しげる「貸本版悪魔くん」がおすすめの理由
「悪魔くん」といえば、「ゲゲゲの鬼太郎」とならんで水木しげる大先生の代表的なヒット作品としてご存知の方も多いのではないでしょうか?けれども、もともと水木しげる大先生が描いていた「悪魔くん」や「ゲゲゲの鬼太郎」は、現在多くの方々が知っているあの「ヒーロー」的なイメージとはかけ離れたものでした。今でこそあれらの作品は、「人間に悪さをする敵」がいて、その「敵」を「悪魔くん」や「ゲゲゲの鬼太郎」という「ヒーロー」が倒していくという構図がとられています。けれども、水木しげる大先生はそもそも「勧善懲悪」という構図がとても嫌いなお方でした。第二次世界大戦で日本が負けたことにより、それまで「正義」とされていたものは見事に崩れ、価値観が真逆になりました。その体験から水木サンは「善」や「悪」とされるものは、ちょっとしたきっかけによってその価値が逆転してしまうこということもあり得るのだと悟りました。そのことを踏まえた上で描かれたのが、この「貸本版悪魔くん」です。大人の方にはもちろんのこと、子どもの頃から読んでもらいたい作品です。
第4位.水木しげる「劇画ヒットラー」
水木しげる「劇画ヒットラー」がおすすめの理由
水木しげる大先生による伝記コミックです。タイトルの示すとおり、主人公となっているのは20世紀最大の独裁者として名高いあの「アドルフ・ヒットラー」です。ヒットラーと言えば、あのナチスを率いる独裁者で、ユダヤ人の大虐殺・ホロコーストをおこなった人物です。現在、この日本においても「悪の象徴」のような扱いを受けており、ヒットラーがおこなった数々の悲惨で残酷なおこないを「非人道的で、くりかえしてはならないこと」であると考えている方々は、私を含めて世の中の大半にあたるでしょう。しかし、水木しげる大先生はこの「劇画ヒットラー」の中で、この極悪人ヒットラーを一味また違った描き方をしています。水木しげる大先生は、ヒットラーのことを「悪人」であるとも、その反対に「善人」であるとも決めつけず、「ひとりの人間」として描いているのです。あるひとりの絵が大好きな青年アドルフが、絵描きになるという夢に挫折してしまい、どのようにして政治の世界に進んだのか、そしてどのようにして独裁者になり、破滅していったのかをつぶさに描いている傑作です。
第3位.水木しげる「完全版水木しげる伝」
水木しげる「完全版水木しげる伝」がおすすめの理由
講談社より2001年に「ボクの一生はゲゲゲの楽園だ」というタイトルで全6巻にわたり出版されたシリーズが、タイトルを変えて再出版されたのがこちらです。講談社漫画文庫より2004年に出版されました。全3巻です。この作品は、水木しげる大先生の人生とその背後でおこっていた社会の動きなどについてつづられた一連の作品たちを、時系列にまとめて再構成されたもので、水木しげる大先生の生い立ちや人生、そして水木しげる大先生が生まれて生きてこられた昭和という時代はどういったものだったのかを俯瞰するには、すばらしい資料となっています。後述する、「のんのんばあとオレ」のエピソードなどもおさめられています。また、青年期に第二次世界大戦を経験している水木大先生による戦争についてのコミックも読むことができます。特に軍隊時代の理不尽ながらも、その中で水木サンらしくのんびりとマイペースに生きてきたエピソードがおすすめです。それらのエピソードを読むと、「ああ、自分も、自分の好きなことや信念を大切にしてマイペースに生きていこう」と思えます。
第2位.水木しげる「総員玉砕せよ!」
水木しげる「総員玉砕せよ!」がおすすめの理由
水木しげる大先生の壮絶な戦争体験をベースとした自伝的なコミック作品の大傑作です。この「総員玉砕せよ!」で、水木しげる大先生は「2008年度朝日賞第36回アングレーム国際漫画祭遺産賞」や「2012年度アイズナー賞最優秀アジア作品賞」など、さまざまな国際的な賞を受賞されました。水木しげる大先生は、第二次世界大戦中にニューブリテン島にあるラバウルという最前線に配属されました。そこに待っていたのは、上官による猛烈な制裁と飢え、そして死と隣合わせの日々でした。水木しげる大先生は、その戦場で仲間の大半を失うことになります。そして、自らの左手も失ってしまいます。理不尽で不条理な戦争の本当の恐ろしさや虚しさは、体験された方にしかわかりません。けれど、そういった経験を漫画というかたちに残して自分以外の人に伝えたいと思ったのは、日本に帰ることなく死んでいった仲間たちの無念を晴らしたいという想いや、もう二度とこんな経験はしたくないしほかの人にもさせたくないという水木しげる大先生の強い使命感があったからだと私は思います。たくさんの方に読んでいただきたい作品です。」
第1位.水木しげる「のんのんばあとオレ」
水木しげる「のんのんばあとオレ」がおすすめの理由
水木しげる大先生の幼少時代の思い出をベースとして描いた自伝的なコミック・エッセイの傑作です。「のんのんばあ」というのは、水木しげる大先生のお家にお手伝いにきていたおばあさんです。のんのんばあは、水木しげる大先生がまだ小学校にあがる前から地獄の話や妖怪の話などを語って聞かせていました。こののんのんばあこそが、漫画家水木しげるを誕生させたといっても過言ではないと思います。のんのんばあとの生活を中心に「しげーさん」(水木しげる大先生)の幼き日の日常におこったさまざまなすばらしいエピソードがつづられています。特に、初恋の相手とのせつないエピソードが心に残っています。数十年前にNHKによりテレビドラマ化もされたのですが、またそれが素晴らしいのでぜひそちらも合わせて観ていただきたいです。特に、しげーさんの父親役を演じた岸部一徳と母親役を演じたもたいまさこの演技が素晴らしいです。また、しげーさんの父親は、とても理解のある優しくて聡明で、当時としては現代的な考えをもつ人で、彼の名言も心に響きます。ぜひご一読ください。