【2019年】スティーヴン・キングおすすめの本ランキングTOP7
キングはホラー映画の原作者としてのイメージが強いのですが、実際に読んでみると確かに恐怖を覚えないでもないのですがそれだけではなく、登場人物たちが背負ってきた人生経験・トラウマ等に結構描写の焦点を当てているのが素晴らしいです。若干メイン・ストーリーから脱線するときもあるものの、それでいて読む者に退屈感をあたえないのが好きな理由の一つといえましょう。具体的にはランキングの中で触れさせていただきます。スティーヴン・キングさんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.スティーヴン・キング「「刑務所のリタ・ヘイワース」 (『ゴールデン・ボーイ』所収の中編)」
スティーヴン・キング「「刑務所のリタ・ヘイワース」 (『ゴールデン・ボーイ』所収の中編)」がおすすめの理由
この作品は『ショーシャンクの空に』というタイトルで映画化されたのでご存知の方も多いでしょう。この作品は’88年に新潮文庫より出版されたのですが訳者の朝倉久志氏によればその前の年(’87年)キングの作品が多数邦訳されたことに触れていて「1人の作家の作品がこれだけ集中的に邦訳されたのは、翻訳出版の歴史でもなかったのでは」という趣旨の発言しています。翻訳家の重鎮である朝倉氏の言葉なのでこれはまず間違いがないと思われます。さて、簡単な筋書きについて触れましょう。無実の罪で刑務所に収監された元銀行員の主人公が脱走に成功すると同時に刑務所で友達になった男との友情を描いた、ホラーではない中編小説。とくにラスト・シーンが感動的で刑期を終えた友人の男が先に脱走に成功した主人公に会うという件が鮮烈に胸に迫ってきました。このラスト・シーンは映画版の演出が個人的には気に入っています。海辺に建つモーテルで佇む主人公の男の元に刑期を終えた男が再会するシーンは海辺の美しさが映像化されたことによって際立っていました。もしも、この小説あるいは映画をご覧になっていない方には強くおすすめします。
第6位.スティーヴン・キング「グリーン・マイル」
スティーヴン・キング「グリーン・マイル」がおすすめの理由
この小説は第7位で挙げた「刑務所のリタ・ヘイワース」同様、刑務所を舞台にしているのですが似て非なるものというか、全然テイストの違う作品になっています。(余談ですがこの作品も映画化されているのですが、『ショーシャンクの空に』と同じフランク・ダボランという人がメガホンをとったのです。)この作品は一月に一冊(全6巻)という刊行形態で上梓されたのでした。勿論、アメリカでは完結されているのですが、キング自身の要望で各国で翻訳されるさいにも、一月に一冊で、ということになったのです。一冊が200ページ以下という薄さもあって私は、刊行ペースに合わせて読んだものでした。物語の舞台は1930年代の死刑の囚人を収監している監房なのですが、不思議な能力を持つ囚人やマウスが登場したりと「刑務所のリタ・ヘイワース」にはなかった要素があります。映画の方も原作に忠実で、他のキングの原作による映像作品のなかでは良い方だと思われます。この作品も感動的な件もあるのですが、キングの伏線の張り方や、読み終わって次の巻を読もうとするのですが、次の月にならないと刊行されないというこの何ともいえない焦燥感(?)なども作品の一部となっていたのです。前述の“感動的な件”についてはネタバレになるので触れない方が良いでしょう。
第5位.スティーヴン・キング「呪われた町」
スティーヴン・キング「呪われた町」がおすすめの理由
私がキングにハマるきっかけになった作品。吸血鬼を20世紀後半のアメリカを舞台に登場させて読者を納得させてしまうキングの力業はデビュー2作目にして確立されています。彼はアメリカの日常にあるテレビ番組や洗剤の製品名など駆使してリアリティを補強します。そういった謂わば世界観を構築するのですが、次々に起こる怪異現象に対しても、登場人物たちは“いや、この世に吸血鬼なんているわけがない”と至極当然な反応を示す訳ですが、どう考えても“これは、吸血鬼の仕業としか考えられない”という考えに達しなければ、この怪異現象を説明できないという結論になるのです。また、ハイブリッドな小説技法もこの作家が嚆矢となっているといえましょう。この作品では冒険小説的な場面もあり、とくに下巻に入っての圧倒的展開に引きこまれていくことでしょう(上巻の前半部分に退屈さを感じる向きもあるかもしれませんが)。
第4位.スティーヴン・キング「It」
スティーヴン・キング「It」がおすすめの理由
文庫版にして全4巻という長大な作品なのですが、キング初心者には『シャイニング』や『ミザリー』から入った方が無難でしょうが、何故4位に選んだかというと、終盤近くの現在と過去が入り乱れる展開は特筆すべきものがあるからです。私自身前半のスローな展開にはちょっと退屈しないでもなかったのですが、登場人物たちがかかえる劣等感や劣悪な環境、持病等、そして小学生の分際でいっちょまえに喫煙など、全てにおいて“正義!”とはいえない男女たちが“イット”と対峙することに対してリアリティを感じるのです。また、キングの作品におけるアメリカが抱える社会的不安も特に強く感じました。例えば不良少年だったヘンリー・バウアーが現在精神病院に収監されているという設定で職員が患者に対して暴力を振るう件などはその典型的な例でしょう。これだけのボリュームのある作品ですから、設問4で述べたようにマルチ・ストーリーをこれでもかと繰り出してくるキングの筆力を感じ取って頂ければと思います。詳しくは、文庫版第4巻目の巻末に評論家&翻訳家の風間賢二氏の解説を参考にしてみてください。
第3位.スティーヴン・キング「クージョ」
スティーヴン・キング「クージョ」がおすすめの理由
私がキング作品で(現在のところは)唯一再読した小説。この作品はキングの作品群のなかでも比較的短い作品にあたるでしょう。コウモリに引っ掻かれて狂犬病に罹ったセントバーナードが人々を襲う話です。ですが、この作品も、故障した車に閉じ込められた(外に出れば犬に襲われてしまう!)親子の恐怖は後半になるまでは描かれていないのです。それでも、男の子がクローゼットに潜む亡霊に怯えたり、父親の会社で問題が発生したり、母親は他の男と浮気したりとネガティブな要素が前半にはあるのです。ですが、やはり読みどころは前述の“故障した車に閉じ込められた親子”の恐怖、これに尽きましょう。このシチュエーションでキングのあの文体で描かれていくのですから、途中で放り出すことなど出来ません!それに、親子共に無事に生き延びることができてハッピーエンド、という風にはならないところにキング作品のリアリティを感じるのです。
第2位.スティーヴン・キング「ザ・スタンド」
スティーヴン・キング「ザ・スタンド」がおすすめの理由
キングの最高傑作と呼び名の高い大傑作。軍の基地からウイルスが流出し、施設から逃げした男からウイルスが外の世界に漏れてしまいます。このウイルスが感染率99%で感染しても死なない人間たちもごく僅かなながらいるのです。単行本上巻の大半がこの死なない人間たちの行動を中心に描かれて、キング・ファンにはおなじみのマルチストーリーな展開。これだけの大作にも拘らず飽きさせないキングの筆力には感服していしまいます。この作品の邦訳が刊行されたのが2000年だったのですが、その当時「遂にこの作品が翻訳されたか!」と話題にもなったように覚えているのですが。特に印象に残っているのが生き残った男と銀行頭取夫人とのシーンなのですが、兎に角、道路は車でうめ尽くされてい、歩いていかなければならないことになり2人は行動を共にするのですが、この頭取夫人、甘やかされた生活を送っていたために足に合わない履物でいこうとすることで口論となり喧嘩別れをし男一人で旅立とうとするのですが、トンネルを通っていこうとしますが、そこにも沢山の車のなかで感染して死亡した人の山!当然トンネルのなかは真っ暗という状況。結局2人は和解し行動を共にするのですが・・・といったシーンでした。そして、石油工場に放火する男・トラッシュ・キャンなども忘れがたいキャラクターでした。
第1位.スティーヴン・キング「シャイニング」
スティーヴン・キング「シャイニング」がおすすめの理由
私が読んだキングの作品のなかで最も“面白い”と感じた作品。日本では当初、パシフィカから刊行されたのでしたが、日本ではホラー小説が売れない状況だったこともあり、あまり注目されなかったようです。その当時は一部のマニアの間で喜ばれたようなのです。ですが、80年代中期に日本でホラー映画がブームになり、そういった映画の原作の幾つかにキングが関わっていたので、日本でも知られるようになったようです。また、この『シャイニング』はスタンリー・キューブリックが映画化したことで有名な作品でもあり、原作は読んでいないが大体の粗筋は知っている、という方も多いでしょう。’86年に文春文庫から復刻された際に訳者の深町眞理子氏は“幽霊屋敷を扱ってこれだけこわいと思わせるキングの筆力を充分味わって下さい”などといっているとおり、私も“これが小説だ!”などと思ったものでした。私が敬愛してやまない友成純一氏も映画評論集『内臓幻想』で「とにかくコワイ、読了してからは数日間は、電気をつけっぱなしにしなければ眠れなかったし、もうホテルには泊まりたくないと思った程だ」などといっていたのを思い出します。