【2019年】三浦しをんおすすめの本ランキングTOP7
三浦しをんさんは直木賞受賞作家ですが、小説のみならずエッセイも面白いです。登場人物全員といっていいほど個性的で、それがとても魅力的。様々な職業観、世界観、それに熱心に取り組む人たちを書くのが上手で、毎回気持ちが熱くさせられます。三浦しをんさんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.三浦しをん「神去なあなあ日常」
三浦しをん「神去なあなあ日常」がおすすめの理由
都会育ちの若者が、高校卒業と同時に三重県の山奥の村に放りこまれて、林業の修行をしながら村人との交流や村での出来事について書いた手記風の小説です。じっくりゆっくり時間と手間をかけて育てる林業が盛んである故か、非常にまったりとした「なあなあ」な日常で、それでも都会っ子からしたら全てが新鮮で、とても生き生きといている勇気の姿が目に浮かびました。所詮純文学のような言葉ではなく、あくまで勇気の手記で若者言葉やリアクションが直接的に表現されているので、大祭のエピソードには思わず笑いながら読んでしまいました。大きな感動や、難解なミステリーなどでもないですが、だからこそ「なあなあ」精神でとても気持ちよく読める作品でした。一癖も二癖もある温かい登場人物たちに助けられながら、春夏秋冬を経て大自然の中で成長していく青春ストーリーが実に爽快です。
第6位.三浦しをん「神去なあなあ夜話」
三浦しをん「神去なあなあ夜話」がおすすめの理由
横浜育ちの平野勇気が、お店も交通機関も電波もないような三重県の山奥で、林業の会社に就職し、狭い村でのしきたりや人間関係に触れていく物語、神去なあなあ日常の続編です。「日常」から時が経ち、最初は何もない村でのきつい山仕事が嫌で仕方なかった勇気ですが、神去村の人々の「なあなあ」な人柄や出来事に触れて、山仕事も神去村も大好きになっていました。夜話では、勇気本人の慣れもあり、山仕事の楽しさが前作以上に伝わってくると同時に、たくましくなったぁと子供の成長を見るような気持ちになりました。元々「なあなあ」精神で大らかな村人たちですが、もう当然のように家族の一員になった勇気と村人達の関係性にほっこりしつつ、前作より緊張感が取り払われた為か、よりコミカルに描かれていて、とても楽しく読み進められました。田舎生活の気持ち良さ、人への愛に溢れた読了感爽やかな作品で、頭に浮かぶ絵が綺麗すぎて、素敵な絵本を読んでいるようなピュアな気持ちにまりました。
第5位.三浦しをん「あの家に暮らす四人の女」
三浦しをん「あの家に暮らす四人の女」がおすすめの理由
阿佐ヶ谷の洋館で暮らす、家族ではない四人の女たちの日常を描いた物語。ライトな文体とライトな内容ではありますが、やっぱり三浦しをんさんの作品に出てくる人たちの関係性は尊いなと思います。みんながやさしい。母娘とそこに住まう二人の女たちは平均年齢42歳とあって、絵にかいたような井戸端会議的などうでも良いことに真剣だったり、そうかと思えば気の抜けるシュールさだったり、噛み合っていない会話すら居心地の悪さを感じさせない中高年女性ならではの穏やかな関係性が面白かったです。ただ洋館に住まう母娘とそこに転がり込んだ女二人、守衛のような山田さんの日常が描かれるのかと思えば、とんでもない事件が発生したり、この世あらざる不可解な現象が発生したりと、日常でありながら非日常的なファンタジー要素もあり、とても楽しめました。四人の女たちについての語り手が分かったときに、家族というものの温かみを感じました。
第4位.三浦しをん「まほろ駅前番外地」
三浦しをん「まほろ駅前番外地」がおすすめの理由
西東京最大の歓楽街まほろ町を舞台にした六つの短編集。便利屋という職業自体、名前は聞いたことがあっても、実際に利用したことも見かけたこともないのですが、便利屋だけに専門家に頼むほどのことでもないけれど、手を借りたいというような依頼も多く描かれていて面白かったです。特に行天というキャラクターが好きすぎる。実際にこういう人と一緒にいたら大変なんでしょうけどね。誰に対しても同じ態度、お客さんや子供、やくざ相手にしても変わらない。飄々としているくせになぜか腕っぷしが強い。影があってどこまでもクール。主人公との掛け合いがたまりません。それにしても、三浦しをんさんは色んな人生を何度も生きてきたのか?と疑いたくなるほど、登場人物の人生にリアリティがありますね。実際に体験した人にしかわからないような心の機微を知っているみたい。まるで想像力の化け物。
第3位.三浦しをん「仏果を得ず」
三浦しをん「仏果を得ず」がおすすめの理由
文楽を知らない私でも、魅力を知ることができて、とても楽しめました。一般的にはあまり馴染みのない伝統芸能の世界を、若手男子の成長物語という展開で馴染みやすく仕立ててあります。健こと健太夫(たけるたゆう)は文楽の研究所を出て、義太夫を語るプロの技芸人として修業中。ある日、師匠の銀太夫に三味線の兎一郎と組むように言われます。気難しい兎一郎に振り回されながらも成長していくのですが、演目が健の気持ちと重なるので、文楽を知っていたら、楽しさ面白さもきっと違うのかもしれません。この作品を読むまで、文楽なんて興味もなかったけど、読み終わったらもう見たくて見たくてたまらなくなります。難しいこと考えずに、あははと笑いながら読める。読んで笑って幸せになって、なんかやる気が出る。三浦しをんさんのお仕事ものってそういうところがあるなぁと思いました。
第2位.三浦しをん「風が強く吹いている」
三浦しをん「風が強く吹いている」がおすすめの理由
かなりの長編ですが、このページ数を苦もなく一気読みできるほど面白かったです。弱小の寄せ集めチームで箱根駅伝出場を目指すという、スポ根ものにしてはあまり頼りないながらも、オンボロの竹青荘やヘビースモーカーだったり漫画オタクだったり、個性的な面々の日常と成長が面白かったです。ただ弱小チームが頂点を目指して快進撃を続けるという王道的展開ではなく、箱根駅伝本戦では丁寧にそれぞれの区間での心理描写もあり、天才だからとか努力したからではなく、個人で戦いながらも竹青荘の仲間たちという大きな信頼があってこその展開にとてもじんわり温かい気持ちになりました。駅伝というテーマもあって疾走感や爽快感もあり、中継所での気の抜けるような会話にクスリとさせられ、最後には達成感も味わえる作品でした。駆け抜けるように読みきりました。駅伝選手は「早い」んじゃなくて、「強い」んだ。
第1位.三浦しをん「舟を編む」
三浦しをん「舟を編む」がおすすめの理由
辞書を作る人々の物語。出版社や編集、辞書そのものを知っていても「辞書を作る人々」というのは一体何をしているのか、身近なようで未知の、不思議な職業について描くとは三浦しをんさんらしいなと感じました。言葉の解釈や専門用語で多少の難解さを心して読み始めましたが、なんだか間の抜けた馬締を始め、個性豊かな登場人物とユーモアのある文章が楽しくて一気読みしてしまいました。個人的には読書好きな方だと思いますが、展開が気になったり、日本文学においては言葉の美しさに感動したり、本を読み終えることで様々な感想が生まれるのですが、辞書については完成しても時代に合わせて改正したり、育てるという作業があり、進化し続けるというのは新たな発見でした。若者言葉であったり、何かの引用や比喩など、ひとつの言葉においてこれ程の意味を持つのは日本語ならではで、世界一難しいと言われる言語だからこその面白さや美しさがあり、辞書を編むことの面白さが伝わってきました。私の珠玉の一冊。