【2019年】白石一文おすすめの本ランキングTOP7
どの作品を読んでも、こういう考え方があるのか、と思わせられる。自分以外の生き方を体験できる感覚が、他の作家の作品よりも深い感じがする。19歳のころに初めて読んでから14年、今でも一番好きな作家。どの作品も、何か新しい発見があり「生きることとは何か」を訴える作品が多い。白石一文さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.白石一文「光のない海」
白石一文「光のない海」がおすすめの理由
震災以降に発表された作品は、少しスピリチュアルな傾向が強いように思う。不思議なことが起きる話ではあるが、それは小説の中だけではなく、自分たちの住む世界でも起こりうるのかもしれない、と何故か思えてくる。(実際この本を読んだときに、自分も少し不思議な体験をした。)子供時代に苦労していて、仕事ができるエリート主人公のお話。なお、白石作品ではエリートが主役の話がとても多い。主人公の幼少期の苦労の部分はつらいが、読んでいて気持ちがいい一冊。 「海」が強い意味を持っていて、海が出てくる色んな場面で、生きることと死ぬことを考えさせられる作品。また、本の装丁が作品の世界観ととても合っている。白石一文の作品にはほぼ性的なシーンがあるけれど、この小説では描かれていない。結構珍しいと思う。読了後、あれはどういう意味だったんだろうと、悶々と考えを巡らせる作品でもある。もやもや感とはまた違う、推理するような気持ちになる。
第6位.白石一文「草にすわる」
白石一文「草にすわる」がおすすめの理由
いかにもマイナス思考な、病んだ主人公のお話なのに、なぜか最後は少しの光が見えるような展開。主人公の性格はとにかくとても暗い。が、世界観までもが暗くない。とても爽やかな風が吹くような、そんな空気感がある。「草にすわる」というタイトルから見えてくる景色がそのまま描かれたようなシーンがあり、それがすごく印象に残っている。こんな暗くて後ろ向きな人間は嫌だな…と思いながらも、最後まですらすらと読めてしまう。また、「花束」という作品も収録されているが、これまでの白石作品とは一風変わった作風。これはフィクションだなぁという感じがするのに、どこかリアルな部分がある。作り物お話だけれど、そうじゃなく感じさせるリアリティーというか…。白石一文の本は殆ど読んできたが、これだけは少し異質だと思う。読後感はとても良く、収録されている3作品ともに、白石作品の中ではさらさらと読める方だと思う。
第5位.白石一文「ほかならぬ人へ」
白石一文「ほかならぬ人へ」がおすすめの理由
直木賞受賞作品。私は、白石作品は是非芥川賞取ってほしいとずっと思っている。相応しい作品がいくつもあると感じるが、この作品は他の白石作品と比べても、とても読みやすい。直木賞向きだと思う。自分より若い女性が主人公ということで、初めて読んだときに驚いた記憶がある。(バリバリエリートの中年男性が主人公の作品が多い。)文庫本には「ほかならぬ人へ」という話も収録されていて、こちらはじんわりと泣けてきて、いつの間にかぼろぼろと涙が流れてくる。好きな人を失う怖さがじわじわと伝わってくる。こちらは20代の男性が主人公。どちらの話も、とても読みやすい恋愛小説でありながら、心揺さぶられる。自分の恋愛と照らし合わせても、きっと思うことがあると感じるストーリー。20代で初めて白石作品を読む人には、この作品をおすすめしたい。
第4位.白石一文「神秘」
白石一文「神秘」がおすすめの理由
末期のすい臓がんで余命一年と宣告された主人公のお話。話に登場する人物がとても多く感じるが、そのひとりひとりが不思議とつながっていく。それは不自然なほど繋がっていくのに、それを不自然、と思わせないストーリーの展開。「死にたくない」って、きっと誰しもが思う。その思いが、主人公をどう動かして、どういった出会いに連れていくのかが見られる一冊。震災後発表されたもので、スピリチュアルな雰囲気が少し漂っているものの、偶然ではなく必然なのだと感じさせるストーリー展開。最後がどういう形で終わるのかを見届けたい、と、どんどん引き込まれていく。500ページ以上もある大作なのに、最後の方には、もう終わってしまうのか…寂しい…と思えた一冊。命と生が、白石一文らしく描かれていると感じる。タイトルがぴったり。神秘というと、もっと不思議な感覚があるけれど、「実世界での神秘」はこういうことなのか、と感じた。
第3位.白石一文「彼が通る不思議なコースを私も」
白石一文「彼が通る不思議なコースを私も」がおすすめの理由
最後の最後にストーリーががつん!と進んで、飲み込まれていくような感覚になる。うまくラストを飲み込めず、考えがまとまらず、困った気分になる。自分の中での落としどころを見つけるのに時間がかかる作品。白石一文の作品にしては珍しく、少し幼いと感じる女性が主役級で出てくる。主人公の林太郎は不思議な人。白石作品に共通する「生きるということ」を考えさせられる一冊。もうあの地震(東日本大震災)のなかった世界では、自分達は生きられないのだなと悟らせられる作品。発達障害の子供たちについても、色々と考えさせられる。発達障害の下りからは「生きづらさ」というものを考えさせれる。実世界での話題も絡めながら、白石一文らしい世界観が楽しめる一冊。理解するのには時間がかかると感じる。何冊か読んで、白石文学が好きだなと感じた方には是非おすすめしたい。
第2位.白石一文「一瞬の光」
白石一文「一瞬の光」がおすすめの理由
19歳の時に初めて中古本で買って、買ったその日に5時間かけて読了した、思い出のある1冊。何度も再読している本はこれだけ。それぐらい好きな一冊。就職活動中の短大生と、超一流企業で働くサラリーマンで彼女の面接官をした男性のお話。全く接点のないふたりが不思議と縁を持って、恋人ではないけれど深い関係になっていくストーリー。読み進めていくほど、この二人のことが好きになる。二人ともとても魅力がある。それぞれに違ったカラーの魅力。二人の育ってきた環境の差がすごいのだけれど、主人公の包容力が本当に暖かく、どうにか幸せになってほしい…と思わずにはいられない。それだけに最後は、なんともやるせない気持ちにもなる。「一瞬の光」はきっとラストシーンのあの部分だな…と思う。これが映画化されるまでは死ねない…と思っている。是非映像化された作品を見たいと思う一冊。重めのストーリーかつ長編の、人生を考えさせらる作品が好きな方にお勧め。
第1位.白石一文「快挙」
白石一文「快挙」がおすすめの理由
これから夫婦になる全ての人、また、既に結婚している方にもお勧めしたい一冊。夫婦とは何なのか?長い人生をふたりでどうやって生きていくのか?主人公とその妻との長い時間を追うことで、たくさんのことが見えてくる。長い長い人生で、夫婦であっても分かり合えない瞬間があること、別れるという選択肢もあったけれど、それでも二人で生きていくこと…。まだ夫婦になって長くない私には見えなかった発見が沢山ある一冊。身体を重ねることにも、意味があるのだと感じさせられた。実際私は結婚してすぐにこの本を読んだが、読んでよかったと思った。人生色々。その一言に尽きるのだけれど、「人生の快挙とは?」と、ふと立ち止まって考えたくなる一冊。最後の最後で主人公が選択するシーンがあるが、その選択は、きっと夫婦として添い遂げたからこその選択なんだろうな、と思う。人生で一番お勧めしたい一冊を選ぶなら、間違いなくこれ。