【2019年】盛田隆二おすすめの本ランキングTOP7
リアリティを感じる作品が多いし、作品に魅力を感じる。独特の描写がとても心地よく、情交を匂わせる描写が想像力を掻き立ててくれる。テーマも自分の興味に合っていてとてもハマってる作品が多い。短編よりは長編が好き。盛田隆二さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.盛田隆二「ストリート・チルドレン」
盛田隆二「ストリート・チルドレン」がおすすめの理由
盛田隆二の単行本のデビュー作。タイトルに惹かれこの作品を購入したことが後に盛田隆二にハマッってしまうきっかけを作ってくれた貴重な作品。新宿を舞台にしたある一族の三百年間にわたる生と性を描いた異色長編。物語は1699年に組頭の女房をたった一度の情交ではらませて故郷下諏訪村を逃げ出した三次から始まる。その三次を一代目とした系列は1998年まで続く。新宿を舞台をしているからか、系列は複雑かつ登場人物がみんな個性豊かで読み進めていくたびに作品の奥行きに気付いていく。デビュー作によくある荒々しさも感じ、作者の情熱もとても感じる。実際にこの作品を読んだあとに、だんだんと自分の血脈が気になり、先祖をいろいろと聞き回ったこともある。特に気に入っているのは情交の描き方。独特でかつ、読んでいて非常に想像力を掻き立てられ、静かに興奮してくる感じはとても気に入ってる。
第6位.盛田隆二「あなたのことが、いちばんだいじ」
盛田隆二「あなたのことが、いちばんだいじ」がおすすめの理由
代表作の「夜の果てまで」の原型となった「泣くかもしれない」が収録されている7編からなる短編集。作者の十六歳の頃の作品と五十三歳の頃の作品が同じ短編集に収録されているので読み比べられる読者にとっては貴重な作品と言える。僕は「夜の果てまで」を読んだ後にこの短編集を読んだので順序としては逆になってしまうが、結果的にはそのほうが良かったと思っている。「泣くかもしれない」の正太は、かつて同じ十代だった頃の自分を思い出させてくれる、自分にとってちょっぴりほろ苦い作品となっている。大切なものをわざと雑に扱ったり、驚きを隠して必死に平然な振りをしたり、大人になる少し前の繊細で素直になれない時期を思い出させてくれる。今だったら、今考えてみると、と思うと心の奥がむず痒くなってくる。大人になった今でも、ふとした時に読み返したしたくなる様な作品。
第5位.盛田隆二「リセット」
盛田隆二「リセット」がおすすめの理由
神戸の少年Aが逮捕された日を中心に、その前後の二週間の期間の高校生と、その親の群像を描いた作品。1997年6月28日に現実におきた「酒鬼薔薇事件」を現実に物語に取り入れることで、よりリアリズムを感じさせてくれる。「酒鬼薔薇事件」を折り返し点におき、帰国子女の女子高生やクラスメイトたちが直面している社会問題にどう立ち向かっていくのかが興味深かった。友達って何なんだろう、母親って何なんだろう・・・と考えさせてくれる。前半の一週間には、ある種の異様な迫力みたいなものを感じる。そこで「酒鬼薔薇事件」。リアリティーが一気に増し物語は続く、絶望の淵に吸い込まれない様に、もがき続け、ギリギリのところで踏ん張って希望のある未来を切り開こうとするところは読みどころ。高校生の真実と親子の絆を現実に感じさせてくれる作品。
第4位.盛田隆二「夜の果てまで」
盛田隆二「夜の果てまで」がおすすめの理由
盛田隆二の代表作のひとつ。短編「泣くかもしれない」と短編「舞い降りて重なる木の葉」をもととして作られたのがこの「夜の果てまで」という長編の傑作作品。両作品を感じるところも多々あるが、まったくの別の作品とも感じられる完成度の高い仕上がりとなっている。そして、盛田隆二の独特のリアリズムを存分に味わえるだろう。まず最初に札幌家庭裁判所に提出された涌井裕里子の失踪宣言書という書類を目にすることになる。そして、涌井裕里子が失踪する当日の、一年前から前日までのあいだの物語を読み進めていく。年上の女性への憧れや遠慮。年下の男性への依存や見栄。いろいろな決め細やかな描写が物語をよりリアルに感じさせてくれる。何と言ってよいのか適当な言葉は見当たらないが、盛田隆二をはじめて読む人には間違いなくおすすめできる作品。
第3位.盛田隆二「ささやかな永遠のはじまり」
盛田隆二「ささやかな永遠のはじまり」がおすすめの理由
どこにでもありそうな、少し切なく、狂おくなる純愛作品。ちょっとした憧れから、好感を持ち、好感を持ったことから接点は増えていき、憧れは恋心に変わり、相手を知れば知るほど、気持ちは増していく。人としてあたりまえのことだけど、社会的に許されない関係の場合は・・・。かなわぬ恋のゴールとは何か、二人の幸せのかたちは何か、家庭とは何か、夫婦とは何か、決断をするときは必ずくる。また、物語に盛り込まれた9.11のテロや北朝鮮の拉致被害者問題などがに時事問題が物語りをより日常に近く感じさせてくれる。かなわない恋をテーマとした作品は多々あり、結末によってはがっかりする作品もあるが、この作品の結末には納得できるし、割りと気に入ってます。終わりがあるから盛り上がるのか、盛り上がるから終わりがあるのか、純愛って何なんだろうとリアルに感じさせてくれる作品。
第2位.盛田隆二「ありふれた魔法」
盛田隆二「ありふれた魔法」がおすすめの理由
心を深く打つ恋とその人生の行方を味わえる作品。妻子ある銀行員の智之と部下の茜が、ふとしたきっかけから次第に距離を縮め始める、二人はそこはかとない感情を抱き、それをゆっくりと育て上げていく過程が、綿密に描かれている。個人的にはそこの部分が最も読み応えがあるところ。物語には現実よりも現実的な会話や感情が収められている。週1回のデートや通帳、デート場所である大井競馬場のトゥインクルレース、ミクシィの足跡調査、スピッツのロビンソンの歌詞を引用した会話などとても写実的でリアルを感じさせられる。物語の展開は心地良く進んでいくが、絶頂を迎えたところからのいきなりの急転直下、一気に読み進めた。・・・そして、読み終えたときには暫く放心していた。そして、とても複雑だが、何ともいえない不思議な感慨が残る。良い作品。
第1位.盛田隆二「おいしい水」
盛田隆二「おいしい水」がおすすめの理由
結婚生活とは何かをとても考えさせられる作品。夫婦での情交問題、嫁姑問題、専業主婦のパート仕事、ママ友問題などを通じて、同じマンション内の住む女性たちが物語の主人公になっている。共に家事に追われ、ときに協力しながら子育てをし、週末にはそれぞれの夫たちも集まって家族ぐるみの飲み会が開かれていたが、ある女性が一人加わったことでさざ波が立ち始める。人生の岐路に立った女性たちの孤独な闘いがリアルに剥き出しに描かれている、女性は強い、とても強い、そして、果てしなくリアルでもある。絵に描いたような幸せな結婚はというものは存在しないんだと頭では理解しているつもりだが、果たして自分にとって結婚生活は「おいしい水」なのか、違うのか?と考えさせられる作品。順位の1、2,3位についてはかなり迷いましたので差は殆ど無しです。