【2019年】筒井康隆おすすめの本ランキングTOP7
私の少年時代の神でした。現在84歳ですが、ずーっと第一線を歩いてきた作家です。書くもののジャンルは多岐にわたります。作品数も多く85年までに全24冊の全集が出版されています。私は短編集が好きです。少年時代に何度も読んで、何度も笑いました。筒井康隆さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.筒井康隆「虚構船団の逆襲」
筒井康隆「虚構船団の逆襲」がおすすめの理由
この本は小説ではありません。どうあがいても正確な表現になりませんが、エッセイ集に当たる本です。この本は中学時代に何度も読みました。しょせん中学生だったので全部理解することは出来ませんでしたが、知的な雰囲気がたまらなかったです。傑作虚構船団に対する気に入らない批評にむかついた筒井先生が、バカな批評に対して批評返しをする、と言う本です。批評返しは現在でもとんでもない禁じ手だとされているらしいです。一体何故そんないらないことをするのかわかりませんが、とても面白い試みになっています。前衛的な本です。他にもラテンアメリカ文学に関する文章などもありましたが、当時は理解することが出来ませんでした。文学者でもありSF評論家でもある巽孝之との対談が収録されていますが、特に知的刺激に満ちていて、興奮しながら何度も何度も読み返しました。
第6位.筒井康隆「残像に口紅を」
筒井康隆「残像に口紅を」がおすすめの理由
この小説にはよくよく考えても何の意味もないような気がします。でも面白ければ何でも良いのです。構造でびっくりさせるところがパズラーのミステリ小説などが少し近いのかもしれません。私はこの本の新聞広告にびっくりしてしまい、どうしても欲しくなって書店にダッシュしました。この小説の構造上の必要から、後半の一部が袋とじになっていました。それを破るときの喜びは非常に大きかったです。物語は日本語の音が主人公の周りから徐々に失われていき、その音に関する言葉、その音を含むものや概念も消えてしまうというものです。その制限の中で主人公は生活を続ける、という本当にもうそれだけの話です。だから何?と言われてしまうかもしれませんが、作品のコンセプトは唯一無二のものだと思います。作者の技巧の冴えも見所です。五十音がどんどん消えていく中で作者が何を書くのか、意味はなくてもドキドキしながら読める小説です。
第5位.筒井康隆「富豪刑事」
筒井康隆「富豪刑事」がおすすめの理由
ちょっと変わり種のミステリです。きちんと本格推理小説になっています。凄く楽しい小説ですが作者の余技みたいなもので、シリーズが沢山書かれると言うことはありませんでした。執着もそれほどなかったのではないかと思います。過去に深田恭子主演でドラマ化されました。小説版の主人公は男性なのですが、興行上必要な措置だと思います。ドラマ版は後半どんどん息切れして行きました。理由は原作のストックが少ないからだと思われます。この作品はミステリの一類型、バカミスの一つです。読みどころは事件がどう解決するかだけではなく、主人公が事件解決のためにどういう風にお金を使うかです。それもばかばかしく頭が悪くないと失敗です。主人公の父親の存在感が抜群です。贖罪のためにせっかくお金をばらまこうとするのですが、事件解決後にそうは上手く行かないところがたのしいです。
第4位.筒井康隆「俗物図鑑」
筒井康隆「俗物図鑑」がおすすめの理由
とんでもない小説です。インパクトが強すぎて、この小説の印象を記憶から消すことが出来ません。この小説の話は塾と学校で聞きました。両方とも先生からでしたが、今なら問題になっていたと思います。私は中学生でしたが、即財布を握りしめて本屋に走りました。ストーリーは変な評論家達が梁山泊プロダクションに集まってきて、次第に世の中と対立していくと言う話です。変な評論家と書きましたが、俗物というよりお下劣で変な人達です。盗聴評論家、反吐評論家、吐瀉物評論家、公衆評論家、月経評論家、など汚らしいものが沢山混じっています。字にするのもつらいものがあります。最初に読んだときのインパクトをどうしても思い出してしまいます。私にとってラストは未だに唐突で謎です。既存の価値や秩序をいくらあおったと言え、単なる変人奇人が出てきてるだけなのですから。
第3位.筒井康隆「農協月へ行く」
筒井康隆「農協月へ行く」がおすすめの理由
短編集です。表題作はマナーの悪さで悪名の高い農協が、月に行ってしまうと言う話です。作者の作品には差別意識と笑いがセットで出てきます。強烈な差別意識がなければ、こんな強烈な笑いは作れなかったと思います。現在ではこういった作品は難しくなりましたが、すがすがしいまでの描写です。全力で笑いに行っている感じが伝わっています。ブラックな味わいが懐かしいです。この短編集にはいくつかの短編が収録されていますが、一番好きな短編が「経理課長の放送」です。ラジオの会社での激しい労働組合闘争の中、放送に穴を開けないために経理課長が放送を行うという話。放送を送る上でまるで適性を欠いている経理課長の悲哀が伝わってきます。戸惑いと悲しさが漂ってきて、何回読んでも笑えました。課長は懸命に目の前の仕事に適応しようとするのですが、仕方ないよねと言うような落ちになります。
第2位.筒井康隆「宇宙衛生博覧会」
筒井康隆「宇宙衛生博覧会」がおすすめの理由
短編集です。八つの作品が収録されています。印象的な短編がいくつも収録されていています。いくつかの短編は好きなのですが、非常に毒性が強いものも収録されており、人に勧めるのを躊躇するような作品もあります。私が特に好きなのは「間接話法」と言う話です。主人公は外交官です。体の関節をポキポキ鳴らして会話する、竹ひごのような宇宙人が住む星に赴任します。主人公は当然人間なので、万全な会話は出来ないのです。しかし地球との間にトラブルが起きてしまい、決死の覚悟で事態の収拾にかかりますが…。当然完全には関節は鳴りません。外交官が関節をならして喋った言葉が、全てブロークンな日本語で書かれています。必死な様子と混ざり合って、何度も爆笑させられました。必死で職務を果たそうとする人間の悲哀にはなんとも言えないものがありますが、この短編は落ちも秀逸です。
第1位.筒井康隆「日本列島七曲がり」
筒井康隆「日本列島七曲がり」がおすすめの理由
短編集です。この世で最高の短編集の一つです。私が中学時代に読んだ一番偉大な本です。読むと意味もなく笑えます。短編が11収められているのですが、好きなものがいくつもあります。一番好きだったのが「陰悩録」です。ほぼ全編ひらがなで書かれています。主人公は頭が弱い人なのですが、風呂の排水溝で遊んでいたときに陰嚢を排水溝に吸い込まれてしまいます。主人公が解放されるまでのあれこれ悩む様子が書かれます。作者がどんな顔でこの作品を書いたのか知りたいです。「郵性省」も大好きな作品のひとつです。自慰行為でテレポートしてしまうと言う話です。ティーンエージャーの男性にとっては身がつまされました。好きな女の子の家のリビングルームまで恥ずかしい格好で飛んでいくなんて最低です。小説の中で主人公が起こした混乱具合には何度も笑わせられました。