【2019年】湊かなえおすすめの本ランキングTOP7
湊かなえさんの小説には人間の内面、(特に黒い方向の)やその人間が複数集まったときに起こってしまうことに焦点を当てていることが多く、怖くて見たくない、だけど何故だか読まずにいられないという不思議な魅力があります。湊かなえさんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.湊かなえ「白ゆき姫殺人事件」
湊かなえ「白ゆき姫殺人事件」がおすすめの理由
謎解きミステリーなのだけれど、主体はそっちではないような気がした作品。ある美人OLが殺害され、様々な状況から、ある一人の女性に疑惑がかかります。その女性の同僚が、ゴシップ誌のライターに話を持ち掛けるところから物語は始まり、疑われている女性の周辺の人々に対して取材して回ります。インタビューに答える人々、という形式の小説です。犯罪者の疑いをかけられた人間について周囲に聞いたとき、その立場によっていろんな意見が出てくる。対象が元々嫌いならこき下ろすだろうし、どっちでもないなら情報に惑わされて意見を変えるかもしれない。日々起きている事件、ニュース、何気なく受け止めている情報の中に、真実は何割くらいあるのだろうと考えさせられました。無意識に得た情報を鵜呑みにして誰かのことを偏見してしまうこともあるのだろうと思います。読んでいて、あまりに現実的でゾッとしました。
第6位.湊かなえ「夜行観覧車」
湊かなえ「夜行観覧車」がおすすめの理由
読みやすくて、どんどん読み進められる力があって、伏線もきちんと回収されてて、次々映像化されるのが頷けます。登場人物みんな普通だけど普通じゃない。それは現実でも同じだと思うから、そういうところがリアル。極端にオカシイ人はそうそういないけれど、だからってオカシイ部分が全くない人なんていない。章ごとに視点が変わるという手法だけど、同じ章でもその家族間で視点が変わったりします。だけど不思議とややこしくはない、面白い造りだと思います。人を憎んだりカッとなったりする原因って本当に些細なことだったりする。ある人にとっては何てことのない言葉が、別のある人にとっては地雷になりえる言葉だったりして。現実世界よりデフォルメされていると感じるところはあるものの、人間関係のヒダのようなものが丁寧に描かれていて好きです。ラストの高橋家の前のシーンでは、思わず泣いてしまいました。
第5位.湊かなえ「贖罪」
湊かなえ「贖罪」がおすすめの理由
母親の愛情と呪縛、罪、偶然と運命がずっしりと重たいです。苦しくて目を逸らしたくてじっとり気持ちの悪いのに何度も読み返してしまう本です。ぐいぐい引き込まれます。読後の不快感がすさまじく、「告白」ととても構成は似ていますが、個人的には「告白」を超えるイヤミスの頂点だと感じました。湊かなえ作品によくある、独自形式(章ごとに主人公が変わる)で描かれており、面白さは折り紙付きです。一気に読ませるという意味においては、きっと湊さんはとても長けているんだと思います。純粋に面白いから、どんどん読み進められました。それにしても湊さんの構成力には脱帽です。一つの事件をめぐって、一話一話別の人の告白として語られ、最後は繋がり、単なる謎解きではなく、罪と贖罪の意味を問いています。登場人物誰にも共感はできなかったけれど、色々考え悩みながら読みました。
第4位.湊かなえ「告白」
湊かなえ「告白」がおすすめの理由
読み終えた途端凄い衝撃を受けました。ここまでやるかと。本来は第1章だけで完結した作品に、違う人物が一人称になっている短編を付け足した短編の連作です。だからやや蛇足になっているように思える章もあったけど、引き込む力があるというか、一気に読めるミステリーだと思います。救いがないところが救いと思えるような。少しずつの状況のズレで起こってしまった幼女の死。その母である女教師は、教師としての自分と、母親としての自分、どちらを取るのか。たくさんの残酷な要素が絡まりあったミステリーです。よく考えてみればまともな人間が一人も出ていないかも…。面白かったのは、各個人の心境が上手く書き出されていたところ。一つの事件とっても多角的な視点や意見が重なっていることを再認識させられます。淡々とした文章にこめられる、それぞれの人の想い。殺人事件が日常化している現代だからこそ身に染みます。
第3位.湊かなえ「Nのために」
湊かなえ「Nのために」がおすすめの理由
ドラマが良作だったから、そのイメージを抜きにして読むのは難しかったし、先にドラマを見ていたからこそこの小説に対する理解が深まったのかもしれません。事件、事件の10年後、そして過去への回想。4人の登場人物が語る事件のこと。警察の取り調べで4人が語ったことが冒頭にあり、その後それぞれの独白がある、という構成。取り調べと独白の間には違いがあり、それぞれが少しずつ嘘をついているということが浮き彫りになっていきます。そしてそれぞれが、大切な人「N」のために秘密を持ったり、語らなかったりするために、想いが通じあわないままにすれ違ってしまっているのも切ない。語らない愛、というのも確かに存在する。でもその一言を言ったり聞いたりしていればすれ違わなくて済んだのにということもたくさんあるのだと思いました。湊さんの作品はどうしても読後感が独特で、続けて何冊も読めないけど中毒性にさせるものがあります。
第2位.湊かなえ「花の鎖」
湊かなえ「花の鎖」がおすすめの理由
3人の女性の主人公の話がそれぞれに進んでいくスタイル。フラワーベースにりんどうを生けて、きんつばを食べながら、眺めたくなりました。全く無関係に見える3人のつながりが徐々にわかっていきます。山と花ときんつばが出てきて、途中で、あれ?これってもしかして?と思いながらドキドキしながら読み進めました。登場人物たちの背景など、頭の中で整理するのが少し大変でしたが、状況描写や散りばめられていた伏線の回収が面白かったです。最後はなるほどそうだったのかと納得、とても感動しました。湊かなえさんからイメージするような嫌な感情は全くなく、やわらかく温かい雰囲気で一気に読めました。読み切ったその瞬間からまた最初のページを捲りたくなるそんな本は久しぶりです。湊さんの他の作品のテーマでもあった因果応報。最後にはこんなことが起こるのかと改めて自分の行動に身が引き締まる思いでした。この本は一気に読むのがおすすめです。
第1位.湊かなえ「少女」
湊かなえ「少女」がおすすめの理由
転校生の紫織は、親友の自殺を目撃したと自慢げに言う。それを聞いた敦子と由紀は、自分も人が死ぬ瞬間を見て、優越感をもってそれを語りたいと思うようになります。女子高生という、大人でも子供でもない、だけど制限があって限定された世界で生きている彼女たちの複雑な心の描写はさすがです。彼女たちの脆くて儚くて、だけど必死な微妙な世界で起きる幾重のミステリーは、複雑に絡み合いながらも最後にはすべてが落ち着くところに着地していきます。切ないながらも、読後はどこかスッキリした感覚。登場人物が綺麗に絡み合っていて面白いです。まさに因果応報がこの物語のテーマです。ラストにかけて鼓動が早まるような、しかもその感覚がもう身体にしみついて、いつまでも文字を追っていたいとすら思いました。走り出すような文章が素敵でした。久々に愛しいと思える本に出会えました。