【2019年】太宰治おすすめの本ランキングTOP7
太宰の作品は、太宰自身の人生や考えが書かれた作品が多くあります。作品を読んでいくうちに、作品に惹かれることはもちろん、太宰の性格にも惹かれていってしまうんです。また、太宰の作品の比喩や文章の書き方が特徴的で、読んだ後に才能を感じる他、読み終わった後になんとも言えない感情になるのが好きです。太宰治さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.太宰治「眉山」
太宰治「眉山」がおすすめの理由
主人公の小説家が通うお店に、ある女性が居ました。その子は階段をどたどたと降りたり、駆け込んでトイレに行くし、話をしている中で主人公は彼女にイライラしてしまうこともありました。主人公が体調を崩している間に、その子に病気が発覚し、もう手の付けようがない状態になっていました。そのことを聞いた主人公は、手のひらを返したように「いい子でした」と話すのでした。この手のひら返しが好きで、主人公や他の常連はこれまで、その子の陰口を散々話してきました。なのに、彼女が死んでしまうかもしれないとなるとすぐに手のひらを返し、いい子だったと話す。その部分が好きで、短い小説ながらついつい何度も読んでしまいます。自分の生活においても、こういったことはないでしょうか。いい印象はなかったのに、いなくなったと思ったらどこか寂しさを感じる。読んだ後、ちょっとした自己嫌悪を抱いてしまうのも、太宰の作品のよい部分だと思います。
第6位.太宰治「グッド・バイ」
太宰治「グッド・バイ」がおすすめの理由
この作品は、未完成です。なぜかというと、太宰が入水自殺をする直前にかかれた作品で、彼が死んだため、完成していないんです。彼は、死を考えながらこの作品を書いたのでしょうか。この作品は、これまでの作品と比べても、比較的コメディー感があり、明るい印象を受けます。しかし、この作品を完成させずに太宰は死にました。この作品は、主人公がこれまでつくった愛人との関係を清算し、まっとうな生き方をしようとする話です。とある女性に手伝ってもらい、これまでの関係を清算しようとします。この作品が続いていたら、どのような終わり方になっていたのか、それを想像するのも楽しみの一つです。「グッド・バイ」というタイトルの通り、太宰もこれまでの人生を清算しようとしていたのでしょうか。彼が死んだ今、真相はわかりません。ついつい深堀したくなる作品です。
第5位.太宰治「美男子と煙草」
太宰治「美男子と煙草」がおすすめの理由
まずタイトルに惹かれて読んだ作品です。この作品は、太宰のある出来事が小説となったものです。この作品では、太宰の弱弱しい一面が描かれています。あるお店で酔っぱらった文学者に、太宰は作品について批判をされます。笑って聞き流していた太宰ですが、家に帰って遅い夕食を食べていると、嗚咽し、お箸もお茶碗も置いて泣いてしまいます。奥さんに慰められ、横になった太宰ですが、その後も泣き止むことはできませんでした。女性として、こういった男性は母性本能がくすぐられるというか、ついつい太宰に惹かれて行ってしまうんですよね。また、この後太宰は編集者に呼び出され、上野の浮浪者と写真を撮ることになります。この作品のオチがおもしろくて、太宰と浮浪者が一緒に撮った写真を「これが浮浪者だ」と妻に見せると、妻は太宰をみながら「これが浮浪者ですか」と話すんです。最後でくすっと笑える作品です。
第4位.太宰治「たずねびと」
太宰治「たずねびと」がおすすめの理由
太宰は、東京で空襲の被害を受け、妻と子供と一緒に、妻の実家である甲府へ疎開します。しかし、その甲府も空襲の被害を受け、娘は目があかなくなったり、家が無くなってしまったりと大変な目に遭っていました。そこで、太宰は実家である青森に疎開することになります。太宰達家族は、青森で終戦を迎えました。この作品は、太宰達が青森へ向かう列車の途中で出会った女性に向けた手紙です。夏の暑い時期ですから、持っていたおにぎりは腐り、子どもたちは人の食べ物をじっと見つめるなど、あさましい状態になっていました。それを助けてくれた女性へ、お礼の気持ちを伝えるというお話です。お礼を伝えたいけれど、本人に届く可能性など低く、しかしお礼をしたい本人の気が済めばいいのだ、という太宰の気持ちを比喩としてあらわした一節があるのですが、その比喩に太宰の才能を感じました。
第3位.太宰治「人間失格」
太宰治「人間失格」がおすすめの理由
太宰の作品の中でも特に有名な人間失格。この作品は、太宰の遺作ともいわれています。遺作と言われている通り、太宰の人生と共通する点も多くある作品です。主人公の大庭葉蔵は、小さいころから人の営みや幸福が理解できず、持ち前の道化でそれをごまかしながら生活してきました。上京し出会った友人と遊ぶ中で、酒や女を覚え、堕落していく生活。女給と心中未遂をして彼女だけを死なせ、同棲していた女性とその子供の幸せを、自分は壊してしまうのだと身を引き、純粋無垢な女性が乱暴されているのを見て、その女性が隠していた薬でこん睡状態に陥ったりと、太宰の人生とも重なります。サナトリウムだと思って連れていかれた先は、精神病院。そこで葉蔵は、自分自身が「人間失格」であったと実感するのでした。太宰も、自分のことを「人間失格」だと感じていたのでしょうか。
第2位.太宰治「斜陽」
太宰治「斜陽」がおすすめの理由
人間失格と同じく、太宰の人気作である斜陽。この作品は、戦争によって没落した貴族のお話です。主人公のかず子は、母と2人で暮らしていましたが、戦争の影響でお金が無くなり、山荘に引っ越すことになりました。そこで母が体調を崩したり、戦争に行った弟の直治が帰ってきたりと問題も多く、かず子はかつて「ひめごと」をした直治の知人・上原に手紙を送るのでした。いつまで待っても返信は来ず、母は死に、かず子は上原の元へ行く決意をします。「戦闘、開始」。彼女にとって、恋愛とは革命であり戦闘である、この強さに私も背中を押されました。好きなのだから仕方ない、そのかず子の強い意思がグッときました。没落していく貴族の話、とされていますが、私はかず子の恋愛の部分がおもしろいと感じています。ちょっと難しい恋をしている方の背中を押してくれる作品です。
第1位.太宰治「道化の華」
太宰治「道化の華」がおすすめの理由
道化の華の主人公の名前は、大庭葉蔵。人間失格の主人公と同姓同名です。ストーリーも、主人公が心中事件を起こし、女性だけが死んだという、人間失格、そして太宰の人生と重なる点が多くあります。この作品の特徴は、ところどころに太宰本人が表れるところ。太宰の作品どころか、どの作家の作品でもなかなかない手法ですよね。だからこそ、太宰の気持ちが伝わってくる作品でもあります。特に好きなのが、この作品の最後。自殺幇助に問われた葉蔵が、病院を出て警察に行く日の朝のことです。看護婦の真野と2人で山に登り、足元は断崖絶壁。波がゆらゆらと揺れているのが見えます。「ただそれだけのことだった」で締めくくられる作品ですが、この後2人は素直に病室へ戻ったのでしょうか。もしくは、ここから…。と考えると、つい想像が止まらなくなる作品です。