【2019年】原田マハおすすめの本ランキングTOP7
原田マハさんの話は本当にどれも大好きですが、なんと言っても、キュレーターとしての自身のキャリアを生かした美術ものの壮大な物語がたまりません。マハさんのおかげで、モネも、マティスも、ゴッホもルソーも、あの天才パブロ・ピカソにも愛着を持ってしまうのです。原田マハさんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.原田マハ「暗幕のゲルニカ」
原田マハ「暗幕のゲルニカ」がおすすめの理由
まさに圧巻としか言いようのない凄いスケールの話でした。ピカソの愛人の視点と、ピカソを研究する女性の視点が時代を超えて交互に展開されます。今回はピカソのゲルニカの反戦のメッセージを中心とした物語の展開、あのテロと絡みなので、芸術の役割や持っている力を認識させられるようでした。その反面、1枚の絵にここまで反戦メッセージがあるのかとも思いますが、ピカソのゲルニカは、抽象度が高いからこそ、時代を超えた普遍的な反戦メッセージを残せる作品だと思いました。帯にもあった、「衝撃のラスト」は本当で、鳥肌が立ちました。美術ものは自分には縁遠いと思っている方に、だまされたと思って是非読んでいただきたいです。世界が広がります。小説好きの方なら、きっとマハさんワールドに引き込まれると思います。文章構成力、ドラマティックな展開、感動のエンディングでいつも心を虜にされます。
第6位.原田マハ「サロメ」
原田マハ「サロメ」がおすすめの理由
これぞ原田マハさんの真骨頂ではないかと思います。オスカー・ワイルド、オーブリーとメイブル、実在した稀代の天才を、事実をもとにフィクション化していく手法が毎回鮮やかで驚かされます。ほんとうにこの人たちを目撃したような錯覚さえ覚えてしまいます。また、マハさんの作品は、時代を微妙に入れ替えながら話を同時進行させるところが素晴らしく、楽園のカンヴァス以来、とくに画家の話の作品には目を見張る構成力にうなされます。私は単行本で読んだのですが、表紙にオーブリーのサロメの挿絵が大きく描かれており、本を読みながら何度も何度も表紙の絵を眺めずにはいられませんでした。19世紀末という時代にいかに衝撃的であったか、きっと現代の我々には想像のつかないくらいだったのでしょう。素晴らしい作品でした。これぞマハさんです。是非ともご一読をおススメします。
第5位.原田マハ「たゆたえども沈まず」
原田マハ「たゆたえども沈まず」がおすすめの理由
とても日本語が美しいです。読みやすくて面白かったです。ゴッホのみならず、印象派の絵画鑑賞が好きなら絵を見る見方もちょっと変わって楽しめるようなアートの世界を堪能できます。混じったストーリー展開で、フィンセント視点ではなく、片割れともいえるテオの視点、林忠正のもとで画商を営む男性の視点から語られる構成はとてもよくできていると思いました。フィンセントの精神は非常に脆く、繊細なので、それを第三者の目からやきもきしながらみました。周囲の人がフィンセントの成功を切実に祈りつつも、それが無残に砕かれていく、そういった痛ましさを感じ取ることができました。ゴッホの絵の完成よりも、ゴッホ兄弟が浮世絵に惹かれる一連の流れがとても印象に残りました。自分も大好きな広重と北斎の絵が、大きな画家に影響を与えるのはうれしいことです。
第4位.原田マハ「楽園のカンヴァス」
原田マハ「楽園のカンヴァス」がおすすめの理由
深い緑が印象的な「夢」を題材に、アンリ・ルソーの絵を巡るお話でした。もともと美術が大好きなのですが、キュレーター目線から物語を読む、ということが新鮮でした。それも、内容としてはルソーの謎の絵画を巡るものです。この小説では、ルソーの謎に迫るためにもう一つの物語を読んでいくのですが、この物語自体が面白く、小説の中の登場人物と一緒に続きはどうなるんだ?とワクワクしながらページを捲りました。同時進行的に、ティムと織絵の物語も進み、一つの絵をめぐって様々な思惑が交差していくさまが見事です。さらに、この物語は基本的に回想型になっていて、複雑な謎が面白いほど絡んできます。ティムと織絵の関係は?「夢」はどうやって描かれたの?ティムはバレずに進められるの?いくつもの引っかかりが最終的には収束していく、爽快な読後感を味わえました。
第3位.原田マハ「生きるぼくら」
原田マハ「生きるぼくら」がおすすめの理由
お米作りとマーサばあちゃんを軸に、一人の人間が自分を取り戻していく物語です。情景描写が綺麗で、輝く広大な自然が目に浮かぶよう。強い生命の熱を閉じ込めた本だと思いました。その熱はどこまでも等しく分けられてあったかくなって、元気が出ます。ほんわかしたおひさまみたいな温かいお話だと思いました。ひきこもりニートな人がどういう人かはわかりませんが、いまいち働きにいこうという気がしない人が身近にもいるので、そういう人にもこういう未来はあるのかもしれない、と希望が持てる話でした。きっともともと主人公の人型が優しいのでしょう。ちょっと涙がこぼれました。ちゃんとした大人に囲まれて、期待されて暮らしていると、人間はいい方向に向かうのかもしれないなと、読んでいくうちに心が癒されていくのを感じましたし、何だか希望が持てていい話だなと思いました。
第2位.原田マハ「本日は、お日柄もよく」
原田マハ「本日は、お日柄もよく」がおすすめの理由
スピーチライターという、日本ではまだあまり知られていない職業を中心に描かれているお仕事小説でありつつ、主人公の二ノ宮こと葉の恋愛も絡めた恋愛小説の要素もあります。ストーリーの流れはとてもベタなのですが、時々織り込まれる素晴らしいスピーチの数々(披露宴でのスピーチ、弔辞、政治家のスピーチなど)に何度も胸が熱くなったり、スピーチライターというあまり馴染みのない仕事が興味深く読めたので、その面白さだけで十分でした。というか、こういう小説はむしろベタな方がいいのかもしれないと思うほど。挫折のような出来事の後、出会いとともに気づきがあって、めちゃくちゃに揉まれながらも最終的には爽やかな気持ちになれるところに行きつく。ストレスのない、爽快感抜群の読み心地でした。私自身はスピーチする場面に出くわすことはないに等しいけれど、もしもこれからそういうときがあった時はきっとこの小説を思い出して開くだろうと思います。
第1位.原田マハ「星がひとつほしいとの祈り」
原田マハ「星がひとつほしいとの祈り」がおすすめの理由
切なかったり悲しかったりするけど、その倍清々しいです。7つのお話からなる短編集なのですが、全ての物語に共通してそんなことを感じました。予定外の子供を身ごもってしまったOL、不倫中のライター、神経症の娘を持つ母親、かつて義理の娘だったミュージシャンの逃亡を助ける初老の女性など、現在進行形で問題を抱える女性たちが主人公で、状況はそんなに簡単に良くはならないけど、先にうっすらと光が見える。そんな読後感を与えてくれる物語たちが、とても愛おしかったです。旅の場面もいくつか出てきて、自然の多い描写も清々しかったです。親しさとか付き合いの長さは関係なく、空気とかタイミングで訪れる、後から振り返ってみれば不思議な時間。実際にもあるそういう瞬間がリアルに描かれていて、そいいう温かさがあるから人は生きていけるのかもしれない。そんなことを思いました。