【2019年】司馬遼太郎おすすめの本ランキングTOP7
私は歴史や伝記が好きなのですが、興味を持った人物が主人公の司馬遼太郎作品を読むとその時代が手に取るようにわかるところ、そして作品を読んで一層興味が深まり、ゆかりの地を訪ねたり詳しく調べたりするようになるほどの魅力がどの司馬作品にもあります。司馬遼太郎さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.司馬遼太郎「峠」
司馬遼太郎「峠」がおすすめの理由
幕末の越後長岡藩家老の河合継之助を主人公とする長編小説です。司馬氏が取り上げるまで河合継之助は無名の存在で、司馬氏が掘り起こした人物の一人だったということです。この人も突出した奇矯な感じの人間として描かれていましたね。とても印象的なのは、なぜか官軍に逆らい幕府側として長岡藩をあげて戦うのですが、当時、アメリカの南北戦争が予想外に早く終わったためにアメリカから流れた武器が大量に横浜港に輸入されたということでした。そして河合継之助は軍資金を作って、アームストロング砲(大砲のこと)、ガットリング砲などを買い込むのですが、ガットリング砲とは機関銃で西部劇に登場するあれなんですね。日本には3台しかなくそのうちの2台を継之助が購入したということです。しかし山間部の平地でないところでは設置が難しくて使えなかったという話が載っていて、継之助が負傷して破傷風となり、自分を火葬する火を起こせと命じてその火の勢いを見ながら亡くなったという話と共に忘れられないエピソードです。2020年に映画化されるそうでびっくりしました。
第6位.司馬遼太郎「花神」
司馬遼太郎「花神」がおすすめの理由
これは大村益次郎について書かれた小説でドラマにもなって映像化されています。この人は、大阪の緒方洪庵の適塾の塾頭となるほど優秀な人だったが、長州へ帰って田舎の父の後を継いで村で医者をしていたのに、戊辰戦争に駆り出されていつのまにか戦術士官のようなものになってしまったのです。この人も、勉強はできるが挨拶は出来ない、村人に「暑いですね」と挨拶されて、「夏はこんなものです」と不愛想なことしか言えず、奥さんがヒステリーを起こすと田んぼへ飛び込んでじっとしているという、典型的なアスペルガー症候群にしか思えない、お勉強は出来ても日常生活は問題山積という人格のように描かれていました。アスペルガー症候群は既存の価値観に縛られないから、変革期に活躍するとされていますが、明治維新は随所にこういう人が適材適所のように活躍したのかと感慨深いです。戊辰戦争で京都に駐留中の大村益次郎の元に村の友人が来て、道を歩きながら、はやく村の奥さんのところへ帰れと説得している最中、益次郎は京の道は(今のようにアスファルトでない)千年もの間人々の往来で土が固められて水たまりがないと感心していた頓珍漢なシーンが忘れられないです。
第5位.司馬遼太郎「世に棲む日日」
司馬遼太郎「世に棲む日日」がおすすめの理由
幕末の志士で松下村塾を開いた吉田松陰と長州藩士の高杉晋作らを描いた長編小説です。吉田松陰は高杉晋作、久坂玄瑞から伊藤博文、井上馨に至る幕末の志士である長州藩士、後に明治の元勲となった人々を育てたことでも有名です。吉田松陰が後継者と考えて妹と結婚させた久坂玄瑞は司馬氏はあまり買っておられなかったようですが、蛤御門の変で戦死したのが残念です。司馬氏は太平洋戦争時に青春を送り、なぜ日本があのような戦争を起こして敗戦となったのかを知りたいという思いで歴史を調べておられたそうですが、司馬氏が歴史小説を書きまくっておられた時代は日本の高度成長期でもありました。この本の長州藩が育てた天才少年である吉田松陰や高杉晋作の生涯は激動の幕末期のことなんですが、時代の変換期に希望を抱かせる人材を取り上げ書かれた時期もこの小説に反映されている、関係あるように最近思えてきました。吉田松陰が松下村塾で教えたのはわずか3年で、生徒の良いところを見抜く、伸ばすところは教師を目指す方に見習っていただきたいと思います。
第4位.司馬遼太郎「胡蝶の夢」
司馬遼太郎「胡蝶の夢」がおすすめの理由
「燃えよ剣」などにも登場する個性的な医師松本良順らが登場する幕末の蘭学医や西洋医学を学んだ人たちを描いた物語です。司馬遼海という語学の天才だが、相手の気持ちが全然わからないので人間関係最悪の、どう見てもアスペルガー症候群か高機能自閉症の人物が登場します。実在の人物です。医は法外といい、江戸時代の士農工商の身分の外に置かれたという医師の世界のオランダ医学を学んだことによる近代化の波が興味深いです。またこの本にはずっとオランダ方式できたのに、医学書がドイツからの翻訳でドイツ医学の方が先進的だと気付いた医師がいて、ドイツ医学に転向させろと運動しそれまでお世話になったボールドウィンらオランダ側に不義理をしてまで貫いた人が四方八方から恨みを買い晩年不遇に終わった、何も利益を得なかったという不思議な話が忘れられないですね。
第3位.司馬遼太郎「王城の護衛者」
司馬遼太郎「王城の護衛者」がおすすめの理由
これは幕末に京都守護職として京都の治安維持にあたった会津藩主松平容保の物語で短編です。容保は尾張藩主徳川慶勝の弟で、また京都所司代桑名藩主松平定敬は弟という、徳川一門の出身であります。京都守護職に任命されたときから藩内の大反対があったものの、祖先の保科正之家訓のせいで断れずに悲惨な気持ちで京都入りし、至純至誠の人柄もあって孝明天皇の厚い信頼を勝ち取ったのでした。が、新選組の勤王浪士取り締まりの影響もあり、また鳥羽伏見の戦いの後、15代徳川慶喜の大坂城逃亡の道連れにされたこと、慶喜は江戸へ戻っても自分だけ謹慎し勝海舟に丸投げし、結果的に江戸は戦場にならなかったものの、薩長土肥の官軍の怒りが容保の会津へ向けられた挙句、会津戦争となったのでした。容保本人は孝明天皇の信頼を得ていたのに朝敵にされた無念や無慈悲さが清らかな感じで伝わって来て、これを読んで容保を気の毒にならない人はいないと思うほどです。巻末には容保の孫である方と、同じく孫にあたる秩父宮妃殿下からの感謝のお言葉があったことが書かれているのでした。
第2位.司馬遼太郎「坂の上の雲」
司馬遼太郎「坂の上の雲」がおすすめの理由
これは明治時代、愛媛の松山で生まれた秋山好古、真之兄弟、真之の親友の正岡子規を中心に、明治維新後の日本が、欧米に追いつくために必死で近代化を推し進め、国を作り上げる過程を、「まるで坂の上に見える雲を見ながら坂を上っていく」ように描かれた物語です。陸軍軍人となった好古、海軍軍人の真之は、まだ日本では学校も軍隊もなにもかもが確立していないのでヨーロッパなどに留学し、必死で勉強した様子が生き生きと描かれています。貧しいが勉強はしたいという好古が無償で勉強ができるために陸軍士官学校へ入ったとか、同じく弟の真之も海軍兵学校へというかなり頭の良い人たちがそういう道に進む過程が、とても興味深いです。ロシアを仮想敵国と考えて、ひたすら戦略などを学び、ついに日露戦争でロシアに勝つまでに至るのですが、真之がロシアのバルチック艦隊がどこを通って戦場になる日本海へ来るかを考えていると、津軽海峡を通過する夢をまざまざと見たという話がちょっとオカルトチックで忘れられないですね。
第1位.司馬遼太郎「竜馬がゆく」
司馬遼太郎「竜馬がゆく」がおすすめの理由
土佐浪士坂本龍馬を中心に見た幕末の物語で、何度もテレビドラマになったほど有名な作品です。「竜馬がゆく」の主人公は、土佐言葉丸出しで物事にこだわらず自由な発想をする人物として幕末の志士として名を遺す重要な働きをした人です。司馬氏は莫大な史料を読み込んで書かれたとはいえ、この頃はまだアスペルガー症候群や多動性発達障害などの知識や情報はなかったはずなのですが、どうみても坂本龍馬が多動性発達障害とかじゃないかと思われる(実際、今ではそうであるらしいという説が)描写には驚かされます。とにかく10歳を超えてもおねしょしていた問題児竜馬を理解していたのが、乙女姉さんで、坂本家は本家が大金持ちで次男の竜馬を江戸へ剣術修業に行かせられるほど裕福だったことも幸いしたのでしょう。テレビのインタビューで司馬氏が「竜馬のことを思うと、そこだけがぱあっと明るい光が照ったようなイメージがする」とおっしゃっていた通り、この本はいつ何度読んでも飽きない、興味深く考えさせられ元気が出る本ではあります。