【2019年】石田衣良おすすめの本ランキングTOP7
この作家さんは、初めて手にとった小説の作家さんだからということもありますが、描かれる景色は情景があたかもそこにいて見ているように頭に浮かびますし、読みやすいです。物語もスピード感があり、読書で眠くなることもありませんでした。中でも恋愛ものは特に素晴らしく、何故こんなに深く男女の事がわかるのかと不思議になるくらいハッとさせられます。石田衣良さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。
第7位.石田衣良「うつくしい子ども」
石田衣良「うつくしい子ども」がおすすめの理由
この小説はミステリーとなっていますが、犯人が誰かではなく、事件が起きたあとの家族に降りかかることがメインになります。家族の1人が殺人を犯してしまうと残された他の家族は一体どうなってしまうのか?家族の間だけではなく、地域の人や親戚、学校や仕事関係の人間関係がどう変化していくのか、想像しただけでも恐ろしいですが、それを題材にするという着眼点は素晴らしいと感じました。植物に詳しい内向的な14歳の兄が、弟が自分達の妹と同じ9歳の少女を殺した理由は何故なのかと理解しようとして色々と調べ始めるというストーリーです。被害者家族の物語は多いと思うのですが、この作品は加害者の家族の話なので、加害者家族とはおそらくこういう風になるのだろうと、思いました。兄目線の話と平行して、若い新聞記者から見た事件も描かれていて、とても石田衣良さん初期の作品とは思えない完成度だと思います。真相を追う兄の心強い味方の友達との交流、兄や家族の苦悩、そして若手記者の人となりなど、巧みな描写に胸を打たれました。
第6位.石田衣良「4TEEN」
石田衣良「4TEEN」がおすすめの理由
4人の中学生の、中1の終わりから間もなく中3を迎えるまでの1年間を描きます。8つの短編集で、年甲斐もなくみずみずしい若い気持ちになります。特に言えば巻頭の「びっくりプレゼント」と「ぼくたちがセックスについて話すこと」あたりです。東京の風景や風俗が変わっても、14歳は変わらないのだなあとの感慨もあります。
この青春小説は青春というものを忘れかけた人が読んでも面白いと思います。4人の心理描写が非常に巧みで、そしてただうまいだけではなく、それが懐かしい。非常に単純なのですが、それでいて複雑な、そんな年頃の彼らを見事に描いた作品です。笑いながら、泣きながら、そしてまた笑いながら、そんな風に読める小説です。自分もこの4人と友達になって、自転車で東京の街を目的もなく走ったり、どこかの公園でキャンプしたりしたい、仲間に入れてほしいと思わせえてくれる素晴らしい青春小説です。
第5位.石田衣良「美丘」
石田衣良「美丘」がおすすめの理由
この主人公、美丘は自由奔放な姿と、自分の意志を貫く強さを持っているので、読んでいてもなんだか惹きつけられるものがあります。しかし、美丘は不治の病『ヤコブ病』に感染しており、いつ発病するかわからないという怖さの中で生きているなんて信じられませんでした。
いつまで生きられるのか。眠ったら明日、目覚めて朝を迎えられるのか、このような答えの出ない悩みを抱えていたということです。今生きている自分は明日が来ないなんて考えた事さえありませんでした。どちらかといえば明日が来なければいいのにとさえ考えます。本当は自分は弱い振りして、周りに甘えていただけなのかもと考えさせられました。自分の気持ちに正直に生きる美丘でも、大好きな太一に迷惑をかけたくないと遠慮する女性らしい一面ものぞかせてました。病気の事を知っていても、仲間にもなかなか話さず最後まで美丘を支え続ける太一の献身的な姿に思わずホロリと涙してしまいました。この二人のラブストーリーを通して、自分は周りの人とちゃんと向き合っていなかったのではないかと思わされました。美丘のように、例え周りに理解されなくてもはっきりと言わなければ伝わらない事、相手からその時は疎まれてもやらなければならない事があると強く感じました。
第4位.石田衣良「ブルータワー」
石田衣良「ブルータワー」がおすすめの理由
主人公は悪性の脳腫瘍のため、あとは死を待つのみという状態で、さらに妻の美紀は自分の同僚と不倫中という状況から始まります。しかし、主人公はある日、激しい頭痛の後に、200年後の世界にタイムスリップしてしまいます。タイムスリップするのは、自分の肉体ではなく、意識のみの移動なので、記憶はあります。200年後の世界では、人類は悪性インフルエンザにより絶滅しかかっていて、一部の特権階級が病気の影響のない上層の塔のなかに住み、貧民は下層の塔か外に住んでいます。塔の外は悪性インフルエンザ「黄魔」が蔓延しています。この「黄魔」は致死率が高く、ウィルスにプロテクトがかけられていて、根本的な治癒がのぞめないという絶望的な状態です。貧民たちはテロをおこし、支配階級は弾圧をかける、とめどなく繰り返される殺戮と復讐の連鎖。主人公は、もとの現代に時々戻りながら、なんとか塔の世界を平和にしようと試みます。現代と未来の二つの世界を行き来するわけですが、主人公は未来の世界の対立の原因となっているウィルス「黄魔」撃退のため、「黄魔」のもととなっている現代のインフルウィルスを持っていこうとします。しかし、あくまでタイムスリップするのは意識であって、物体はタイムスリップできませんが、ある秘策により解決します。この作品は石田衣良さん初のSF長編小説ということでいつもと違う世界観で楽しめました。
第3位.石田衣良「エンジェル」
石田衣良「エンジェル」がおすすめの理由
この作品は主人公は最初から自分の死体をみているという、既に死んでいる所から始まります。しかし、死ぬ前の2年間の記憶がないため、誰に殺されたのか?何故こうなったのかわからず、その理由を見つけようと真相を解明するミステリーです。生前、好意を寄せていた女性を守るため肉体のない主人公は視覚化や音声化、電気を操ったりの特殊能力を訓練によって得ることができた。
物語が進むにつれて段々と明らかになる真相、空白の2年間の出来事。自分を殺した犯人を知る主人公は絶望を知ることになってしまいますが、そのことによって新たな幸せという形を見つける事になるので、この作品を読んだ後は少しやるせないですが、心に温かいものが残ります。物語の途中で「知らない事が幸せ」という言葉がありますがまさにその通りで、知らない方がという事が増えてくるのが特に印象的でした。
第2位.石田衣良「池袋ウェストゲートパーク」
石田衣良「池袋ウェストゲートパーク」がおすすめの理由
この作品は主人公のマコトが東京池袋を中心に色々な人と関わり、ドラマを展開しながらそこで起こる事件を解決していく物語です。主人公は池袋西口公園近くの果物屋の息子。高校を卒業してからは家業を手伝ったり地元の友だちと遊んだり。ところがある日、仲間のリカが殺され、マコトは池袋のギャングボーイズたちを統括するタカシの助けを得て、犯人を探す所から物語は始まります。どれも一話完結の短編集で、マコトが池袋のトラブルシューターとして地域の事件に挑む様子を軸に、今を生きる若者や社会的弱者の問題を鋭い切り口で描いています。それに、この作品はスピード感があり、物語自体がそうなのか、読書中も読書後もとても爽やかな感じがして、非常に読みやすいです。読書にハマったキッカケがこの作品で、この作品に出会わなければ活字が苦手なまま人生を終わらせていたかもしれません。この作品は登場人物も個性的で魅力的です。中でもGボーイズのキング、タカシは1番のお気に入りで、ケンカも強いしメンタルも強い、クールでカッコよすぎます。そして、身近でリアルな社会的テーマを扱っているため、物語で起こるトラブルはすぐ側で起こっているように感じることができます。
第1位.石田衣良「波のうえの魔術師」
石田衣良「波のうえの魔術師」がおすすめの理由
この作品は簡単に言うと、とある1人の相場師個人が大手銀行を倒すという話です。フリーターである主人公がある日老人と出会います。老人に相場師としての才能を見出され、株取引のレクチャーを受けて段々と相場師として成長していきます。フリーターとは全く違う世界に戸惑いつつも、その世界にどっぷりとのめり込んでいき、株取引の楽しさ、危険も隣り合わせのスリルもあり刺激的な毎日を送ります。しかし、老人には目的があり、大手銀行の相続保険により大切な人を傷つけられたので、その銀行を潰すことでした。そのためには法律にも触れることにもなりますが、綿密な計画を立て、それをサポートする仲間も増えて計画の成功を目指します。
正義が悪を倒すというようなわかりやすい構図だったため、株取引というあまりよくわからない題材でしたが、一気に最後まで読めました。波のうえのというのは株取引での株の値が上がったり下がったりした値動きが波のようで、それを手に取るように読む老人が魔術師ということで、なるほどと思いました。主人公が株取引を少しづつ覚えていくのですが、その過程で読んでる自分自身も興味を持ちましたし、経済の事は全くわからなかったのですが、ニュースなどの日経平均株価や経済の情勢を見るようになりました。そういう部分で価値観を大きく変えてくれて、今でもたまに読み返しています。