グザヴィエ・ドラン監督おすすめの映画ランキングTOP5
10代の頃から監督兼俳優として活躍しており、才能ある監督だと感じるため。「愛」を題材にした作品がほとんど。監督自身はゲイで、性的マイノリティに関する作品も多い。また、家族や恋人同士が衝突しあい、荒々しく喧嘩をする場面が多々あるが、登場人物たちが内に秘めている繊細な心の描写や、彼のほぼ全ての作品がフランス語であることなどから、優美に感じられる作風が素晴らしい。(映像が美しいのも特徴)
第5位.グザヴィエ・ドラン「マイ・マザー」
グザヴィエ・ドラン「マイ・マザー」がおすすめの理由
原題はI killed my mother。直訳すると「ぼくは母を殺した」となるが、サスペンスではなくヒューマンドラマ。主人公、ユベールはゲイ。彼は母親を酷く嫌っており、日々「なぜ彼女を愛することが出来ないのか」と自問自答を繰り返す。ある日ユベールは学校でとある課題を出されるが、どうしても母と関わりたくない彼は、先生に「ぼくの母親は死にました」と嘘をつく。そう、ユベールは「彼の心の中で」母親を殺していたのだった。この映画のおすすめしたいポイントは、誰しもが通る思春期ならではの心の葛藤である。自分がゲイであることが実の親にばれてしまったときの絶望感は性的マイノリティにしかわからないのかもしれないが、葛藤があるのはなにもユベールだけではない。彼の母親もまた、母親になりきれておらず、心が不安定な状態で息子に当たってしまうため、なかなか上手くいかない。そんな2人がたどり着く答えを知った時、きっとこの映画を見て良かった、と思えるはず。監督が若干19歳にして取り上げたとは思えぬほどの完成度である。
第4位.グザヴィエ・ドラン「トム・アット・ザ・ファーム」
トム・アット・ザ・ファーム Blu-ray/Blu-ray Disc/TCBD-0457
グザヴィエ・ドラン「トム・アット・ザ・ファーム」がおすすめの理由
恋人のギヨームを亡くした主人公のトムは、葬儀のためにギヨームの故郷を訪れる。だが、恋人の家族は、どこかおかしかった。ギヨームには兄がおり、ゲイを軽蔑しているが、なぜか彼はトムに対して異常なまでに束縛を始める。主人公もまた、逃れる環境にいたはずなのに、次第に逃亡するという感情が失われつつあった…。「トム・アット・ザ・ファーム」は監督自身が主演を果たした作品であり、監督作品としては珍しくホラーテイストな仕上がり。田舎の閉鎖的で逃れることの出来ない不気味な雰囲気を見事に表現している。登場人物全員がそれぞれどこか、何かがおかしく、作品の意図を読み取るのも難解だ。意味深な描写が多く、暴力的な描写も多い。だが、ここまでハラハラドキドキさせて目が離せない作品は、なかなかない。監督の作品は全て「愛」がテーマだったが、さてこれはどうだろう。愛ゆえの狂気か、狂気ゆえの愛か。どちらにせよ、歪んだ愛情は狂気を孕むことに違いはない。
第3位.グザヴィエ・ドラン「わたしはロランス」
わたしはロランス Blu-ray/Blu-ray Disc/TCBD-0458
グザヴィエ・ドラン「わたしはロランス」がおすすめの理由
主人公の名前はロランス。心も体も男だった。30歳までは。教師であるロランスには女性の恋人、フレッドがいる。女として生きていくと決めたロランスを、フレッドは隣に寄り添って応援することを決意する。この作品は、とにかく映像が美しい。たくさんの服が空から降ってくる場面は、本作品の見せ場であり、監督のセンスの良さがしっかりと主張されている。また、監督の作品はカナダが舞台のものが多い。カナダといえば同性婚も認められているし、性的少数者には比較的寛容なイメージがあるが、実はこちらが真実なのかもしれない。「ありのまま」でいることを受け入れてくれる者と、そうでない者。日本ではトランスジェンダーというと、「オネエキャラ」をイメージする人も少なからずいることだろう。ロランスはきっと、今までのように男として生きていたほうがこの先楽だった。でも敢えて険しい道を選んだ。それはロランスだけではない、フレッドも同じなのだ。美しく、切なく、これも紛れもなく愛の物語だ。
第2位.グザヴィエ・ドラン「Mommy」
Mommy/マミー/Blu-ray Disc/PCXE-50566
グザヴィエ・ドラン「Mommy」がおすすめの理由
グザヴィエ・ドラン監督の作品で最も知名度が高いのが本作品。少しファンタジー色があり、架空の設定でストーリーは進む。「発達障害がい者を子に持つ親は、法的手続きを経ずに養育を放棄し、子どもを施設に入れることが出来る」という法律が制定されたカナダが舞台。「マイ・マザー」と同様、母親と息子の物語なのだが、こちらは母親に焦点があてられている。無論、(女性なら特に)考えさせられるシーンも多い。発達障がい故の、息子スティーブの突拍子もない行動に、母親がとうとう息子を施設に入れる決断を下してしまう場面は「もし自分の子どもが障がい者で、育児を放棄できる法律ができたら…」と考えずにはいられない。そしてこの作品も、ドラン監督のセンスが光る。印象的なのは、スティーブが心の閉塞感を打ち破り、解放されるシーン。映像画面を巧妙に駆使していて、なんだかこちらまで日頃のしがらみなどから解放された気分になる。是非とも映画館で見てもらいたい作品。
第1位.グザヴィエ・ドラン「たかが世界の終わり」
グザヴィエ・ドラン「たかが世界の終わり」がおすすめの理由
ドラン作品の中で最もおすすめしたい映画、それが「たかが世界の終わり」である。(凄い邦題だが、なんと原題もIt’s Only the End of the World!)主人公のルイは劇作家。彼はある日、余命がわずかであることを知り、家族に「自分が死ぬこと」を伝えるために、10年以上帰っていない実家を訪れる。本作品で驚くべきところはルイがほとんどしゃべらないことである。何を隠そう、家族は10年ぶりにルイに会う。話したいことがたくさんあったのだ。久々に家族団らんで食事。ところがドラン監督お決まりの家族同士の口喧嘩がはじまり、ルイはほとんど話すこともなく、なんと自分が死ぬことも伝えられぬまま映画は終わる。きっと鑑賞後に「こんなのあんまりだ」「こんなことって…」と思うかもしれない。これが10年以上も家族をほったらかしにした報いなのか?言い争って何になるのか?結局この作品はなにを伝えたかったのか?カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得している今作品。あなたは、この「愛」が理解できるだろうか?