【2019年】江國香織おすすめの本ランキングTOP7

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【2019年】江國香織おすすめの本ランキングTOP7

書かれる(というよりもむしろ描かれる)文章の手触りが好きです。ひそやかで肌理が細かく濃密。そんな文章でいつも話は展開されます。読んだ後、しばらくはもうこの文章は読めないな、とそう思います。あまりにも彼女が展開される世界観に溺れてしまうために、続いて潜ることが苦しいのです。疲労感を覚えることすらあります。余韻がいつまでも続くため、次の一冊にはなかなか手が出せません。しかし潜るからこそ、あの世界に触れられる。あの魅力に取りつかれ、疲れると解っているのにまた潜ってしまう―――。そんな作家さんは、めったいにいないのではないかなと思います。江國香織さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。

 

 

第7位.江國香織「きらきらひかる」

江國香織「きらきらひかる」がおすすめの理由

初期の作品ですが、作家さんの研ぎ澄まされた感性そのまま形になっているため、The・江國ワールド全開です。彼女の世界観に触れたことがないままにこれを読むと、衝撃を受けます。世界が変わるといってもいいです。「ええ?実際、こんなことって本当にあるの?」と戸惑って構えてしまうほどです。けれど、すらすらすらすら読んでいけます。彼女の軽やかで、けれど肌理の細かい描写は、「これっておかしくない?こんなこと現実にはないでしょう。だって…」という常識人めいた言葉を飲み込ませて、ページをどんどんとめくらせます。他に同性の恋人がいる夫、夫に性を求めない妻。仮面夫婦という言葉がぴったりなのに、けれど彼らの間にあるのは確かに互いを思いやる気持ちであり、愛情なのだと解ります。彼女の作品、全体を通して言えるのは、どこか浮世離れした主人公に、生活に、愛情。けれど、本当にそれが特別に素敵に思えるのです。それは作家の選んだ言葉の力量や、物語全体の空気に由来しているのではないかと思えます。ひたすらThe・江國ワールド。この作品は、そんな江國香織さんの魅力をそのまま形にしたものだと思います。

 

 

第6位.江國香織「スイートリトルライズ」

江國香織「スイートリトルライズ」がおすすめの理由

この本は危険です。わたしは未婚の際にこれを読み、結婚の怖さを知りました。結婚後、この本をしばらく開きませんでした。だってこれは、夫婦がお互いに不倫をしている話なのだから。そして結婚した後にこそ、この本の神髄が解ると思います。そして、不倫を経験したのか、ないのかそれによって、女性も男性も反応が変わるのではないでしょうか。少なくとも、わたしは登場人物の誰にも共感できなかったのですが、既婚女性ゆえに、不倫をする夫と相手には嫌悪感すら抱きました。「この夫、考えが足らないわ。相手は××だわ」と。けれど、妻側には(共感こそしなくても)「ああ。なんて切ない考え方をするのだろう。心に隙間が彼女を惑わしたのかな」という印象しか抱かないのです。きっと、読者の層によっては全く違う感想が生まれるでしょう。けれど、一つ言えることはこんなに怖い…むしろ精神的に真っ暗な気持ちになるお話なのに、登場人物に共感なんてできなかったのに、この本はとても素晴らしいのです。だって、こんなに恐怖を示した本を描いた本は他にあるでしょうか。手触りや、質感まで生々しく、具体的な恐怖として提示されているのです。そして「不倫」ではなく、心の寂しさや切なさ、もどかしさ、それぞれの思いの比重を見事に書き切った作品だと思います。

 

 

第5位.江國香織「なつのひかり」

江國香織「なつのひかり」がおすすめの理由

一言でいえば、「???」。これにつきます。むしろ言えていないけれど、大量の疑問詞が浮かぶこの作品。The・江國ワールドだけではなく、いつもよりも数倍ピントのずれた設定に、構成、そして進行具合はただただ疑問を抱くしかありません。むしろ、「わたしの読解力が悪いの?これは何の暗示なの?ひょっとしたら、これって何かの比喩表現で、わたし以外の人はこれが解っているのかな?どうしよう。国語は得意だったけれど、わたしは短歌や俳句、詩は苦手だったから、何かを示唆していることを感じ取る力がないのかな?わたしの感性って鈍いの?」と不安になったほどです。けれど、不思議なことにこんなに「???」と疑問詞を浮かべ、自分の「本を読む力(?)」に不安を抱くというのに、不思議なことにこの本はとてもとても面白いのです。疑問も不安も、いつの間にかなりを潜め、ただただこの世界に引き込まれるのです。ただし、引き込まれるとは言っても、まるで幽霊のように、登場人物たちから離れた場所にふわふわと浮いて、そっとこの話の流れを第三者的な視点で見守っている感じです(だってわたしの感覚の方がこのお話では違和感があるでしょうし)。この不思議な感覚は、読んだ方ではないと解らないと思います。

 

 

第4位.江國香織「ホリーガーデン」

江國香織「ホリーガーデン」がおすすめの理由

日常と恋愛。過去の恋愛と現在の恋愛、それをそれらを全て内包して日常が続いていくのですが、こんなに身近なものをこんなに丁寧に書かれたら、なんだか自分の日常を少し見直してしまう…わたしは色々なことを雑にしちゃっていないかな…なんてそんな本編とは関係ないことまで考えてしまいます。つまり、誰かの心に触れ、心の内部に触れさせる作品です。登場人物は誰もが一生懸命で、健気で、そしてきっとこんなことを言うべきではないけれど「めんどくさい」人たちです。けれど、めんどくさい人たちは、自分より全てが全て丁寧で、わたしが簡単に捨ててしまうものを抱えて進んでいっている、そのことがとても痛くて、そしていじましく、愛おしく思える。かつて現実感・日常を伴った恋愛小説で、こんなに痛痒くてむずむずとさせる(褒め言葉です)ものはあったのでしょうか。決してドラマ化も映画化もしていない。けれども間違いなく珠玉の恋愛小説だと思います。

 

 

第3位.江國香織「ウエハースの椅子」

江國香織「ウエハースの椅子」がおすすめの理由

単純にこの話を纏めれば、不倫・孤独・そして狂気。わたしは女児の母親です。間違いなく、こんな恋愛を娘にしてほしくないし、やはり既婚者だという事でこれらのキーワードには構えます。しかし現実ではそうでも、彼女の作品になるとこれらのネガティブワードが不思議な魅力を持つのです。それはけして表面的なものではなく、むしろ女性ならば誰もが持っている女の業というものに繋がる、深い深いキーワードです。不倫なんて!と思っている人も、しかし主人公の持つ業に繋がる部分はあるのではないでしょうか?なぜならば、この本は単純な不倫恋愛の小説ではないです。むしろ不倫も、年齢からくる不安や孤独、そしてそこから心に愁いを持つことも、全てが全てただの解りやすい設定といえるのではないのでしょうか。そして、女の、そして人の逃れられない業についてひたすら追求し、そして諦めることで解放される―――。なんだか的外れなことを言えば、お経の一節を物語としていると言えます。

 

 

第2位.江國香織「流しのしたの骨」

江國香織「流しのしたの骨」がおすすめの理由

日常。日常に絡む恋愛。けれどこれは前述したホリーガーデンとは真逆の様相です。なぜならそこには家族が含まれていて、とても穏やかで、潜めるような思いはあちこちに散らばっていない。だから、どちらかといえば平凡な生き方しかしていないわたしのような読者と近い感覚で話は進みます。でも、待って?ちょっとなんだか皆が皆、風変り。なんだか、主人公の家族にまつわる全て(親も兄弟も習慣も)が、なんとなく風変わりなのです。言ってみたら「隣の奥さんとうちは少し感覚がずれているのよね。まあ、それぞれ、家には家の空気ってものがあるから、当たり前だわ」というそれが近いのですが、しかしその違和感が大きいと言えばいいでしょうか。けれど、その違和感がなんだか心地いい―――そんな印象を抱きながら読み進めることができます。あらすじを簡単に言えば?と聞かれたら「日常のお話よ」というしかないのに、けれど「それだけじゃないのよ。読んでみて!」というしかない。つかみどころがないはずはないのに、つかみどころがない、二つとない作品だと思います。

 

 

第1位.江國香織「神様のボート」

江國香織「神様のボート」がおすすめの理由

怖いお話だよ、ときっと女性の(本当に親しい)友達にもしこれを勧めるのならば、一言先に言っておかないと…。そんなお話です。かつて大恋愛をした母親とその娘の二人暮らしの主人公たち。母親と娘の視点で交互に話は進みます。だから日常のシーンもとても多く、親しみやすい…むしろ江國ワールドの中では共感できる部分が多いはずなのに、母親が捕らわれている大恋愛が絡む故に、実は最も遠い作品なのではないかとすら思います。少なくとも、わたしはこれが自分から最も遠い作品だと思っています(最も遠い作品というと、まるで自分がここにでてくる「骨ごととける恋」をして、それにずっと捕らわれている母親像とはまるで逆なのだという事実に、ちょっと肩を竦めるしかありませんが)。彼女の書いた恋愛は全て濃度が高くて、読むと疲労感があるのですが、これは本当に読後、ずっしりと体が重くなりました。けれど、この話は(わたしから最も遠くても)素敵で素晴らしい恋愛小説なのです。ただただ、高濃度のそれに圧倒されるだけで、むしろ崇高なものに触れたような気持になります。

 

 

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